〈微生物×人間〉段仕込みに秘められた酒造りの技術とは
〈微生物×人間〉段仕込みに秘められた酒造りの技術とは

2018.07.27

〈微生物×人間〉段仕込みに秘められた酒造りの技術とは

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毎度!まっさんこと営業の松平です。

皆さん、日本酒醸造に『3段仕込み』という技術があることはご存知でしょうか?

3段仕込みとは、醪(もろみ)を仕込む上でとても重要な工程となります。
いきなり醪の説明をしても頭がパニックになるので、順番にお話ししていきましょう。まず始めに酒母(酛)造りなるものを行っていきます。

酒母はその名の通り酒の母となるもので、以下の条件を満たすことが目的です。

1. 活力溢れる発酵力を持つ清酒酵母を大量に保有していること
2. 酸性環境を作り出す乳酸が所定の濃度で含まれていること

これら2つは醪を仕込んでいくにあたってとても重要な要素となります。
この酒母(酛)造りの段階で生酛造りと速醸造りに分かれていくのですが、生酛は原料である蒸米・米麹・水のみで開始し自然環境下で乳酸を取り込むという伝統的な製造方法です。じっくり時間をかけ酸性状態へもっていくので、汚染されるリスクは高まり酒母の管理は困難を極めます。
一方、速醸酛では原料+乳酸+清酒酵母を初めに添加していきます。そうすることで所定の酸度濃度をクリアでき雑菌や野生酵母による浸食を安定して防ぐことができるのです。
また、生酛系酒母が完成するまでに30日近く要するところを速醸系酒母は15日前後と約半分まで短縮できます。現在の大半の日本酒がこの速醸酛で造られていますが、実はこの製法、今から約100年前に考案された日本酒造りの長い歴史においても革命的な発見だったことは知る人も少ないでしょう。

酒母造りはアルコールをつくることが目的ではなく、醪へ移行する際の土台づくり担う発酵のスターターキットといえます。このことを踏まえて本題の3段仕込みに進んでいきたいと思います。

そもそも3段仕込みって何??

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酒母が完成すると大きなもろみ用の仕込みタンクに移されます。3段仕込みとは1本のタンク仕込みを行う時に蒸米・米麹・水を3回にわけて入れることを指します。

ここで疑問が!?
この本仕込み、1本のタンクと容量が決められているのだから原料を1回に全て入れてしまえば作業効率が良いことは間違いないですよね……。
では、なぜ3段階に分けて原料を投入するのでしょうか?これには冒頭でもお話しした、酒母造りで微生物たちが構築した土台が深く関わっています。

3段仕込みに要する日数は全部で4日間となります。内訳としては1日目、酒母と蒸米・米麹・水を入れ混ぜ合わせる【添(そえ)】と呼ばれる仕込みを行います。2日目は【踊り】といって酵母の増殖を充分にするため丸1日待ちます。この踊りの期間中、タンク内の酵母は約2時間に1回のペースで酵母が分裂し徐々に増殖のペースを上げていきます。3日目【仲(なか)】・4日目【留(とめ)】と再度、蒸米・麹米・水を足していき仕込みを完了するという流れになります。

一般的に仕込みに使う蒸米・麹米・水の分量は
 「添」で全量の6分の1
 「仲」で全量の6分の2
 「留」で全量の6分の3 と仕込み量は順次増えていきます。

1段目の【添】仕込み後は、酒母の乳酸状態が極端には薄まらないことから、細菌類からの汚染を防ぎ、尚且つ優良酵母の数を保つことができるので野生酵母からの浸食を抑えることができます。そして、酵母の活性・増殖を促す【踊り】の期間を経て2段目の【仲】、3段目の【留】を行っていきます。仲・留とも仕込みに使用する原料は倍量ずつ増えていき、乳酸は薄まるものの、踊の期間で活性化した優良酵母により健全な発酵を続けられるということなのです。

また、醪は発酵によって温度を上げていきます。品温を管理するため、一般的には醪の温度は添の時点で12℃~15℃、踊11℃~13℃、添9℃~10℃、最後の留では8℃まで温度調整をする必要があるのです。こうして徐々に仕込み温度を低くするため段階的に原料(蒸米・麹米・水)を投入することが最も合理的なのでしょう。もちろん清酒酵母の性質により温度帯の適合値は変化することも付け加えておきます。

菊の司のidentity

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各蔵各酒の目指すコンセプトによって麹や酒米・酵母、仕込み水などからお酒の味わいは千差万別となりますが、この3段仕込みの温度調節ひとつだけでも酒質に個性を生み出すことが可能となります。例えば当蔵の純米酒は、踊の温度を14℃~15℃とし、添の時の12.5℃よりも高めの温度に設定しております。踊の温度が高いということは、酵母の発酵が多い=酵母の生成する酸が増えるという話しになります。

私たちの狙いは酵母の放出する【酸】にあるのです。

菊の司HPより『グローバルな料理に合わせる純米酒は「酸味」が鍵!』を読んで頂いた方はご存じかもしれませんが、すべては日本酒の味わいを引き締める酸を演出するためなのです。

まとめ

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3段仕込みとは優良酵母の拡大培養と伴に健全な発酵を目的とした、微生物と人間が生み出す日本酒造りの中でも中心的な工程なのです。繊細な微生物を相手に理想の酒質へと近づけていくことは簡単ではありません。

「和の心をもって、酒造りの心とする。」

微生物と人が造るお酒は本当に未知数ですね。
今後とも日本酒の更なる周知に向け進んでいきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。

それでは、第8弾!整いました!

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松平隆寿 MATSUDAIRA TAKATOSHI

菊の司酒造営業部2017年入社。一期一会を大切に 和の心を広めていきたいです。
連載「まっさんの日本酒かるた」では、遊びながら日本酒に触れられる日本酒かるたの完成をめざして、
日本酒に関わるワードをわかりやすくご紹介していきます。

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