「○○正宗」という日本酒が多いのは、ダジャレがはじまりだった
「○○正宗」という日本酒が多いのは、ダジャレがはじまりだった

2019.01.3

「○○正宗」という日本酒が多いのは、ダジャレがはじまりだった

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まいど!ゆーきです。

ところで日本酒の銘柄って、ほんと、色んなネーミングがありますよね。

「菊の司」「七福神」なんてのは優等生的なもので、「タクシードライバー」とか「獺祭」「彗-シャア-」「夜の帝王」「死神」…などビックリするようなブランドも珍しくありません。決して蔵元もふざけているわけではなく、ひとりでも多くのお客様に手に取っていただけるよう、所謂マーケティングを駆使して、試行錯誤しながら、ひねりにひねって銘柄を生み出しているのです。

今回のこらむは、江戸の世、同じように頭を悩ませるひとりの蔵元にまつわる話。

「〇〇正宗」っていう日本酒多くない??

「〇〇正宗」っていう名前の日本酒、多くないですか。

どのくらい多いかっていうと、ざっくり調べたら149銘柄あるみたいです。

森正宗(高砂酒造(株))、岩木正宗(竹浪酒造店)、寿正宗(寿酒造(株))、十和田正宗(十和田正宗盛喜(株))、鳩正宗(鳩正宗(株))、由利正宗((株)齋彌酒造店)、沖正宗(浜田(株))、澤正宗(古澤酒造(株))、東光正宗((株)小嶋総本店)、山形正宗((株)水戸部酒造)、会津正宗(豊国酒造(資))、奥州関の正宗(白河醸造(株))、楽器正宗((名)大木代吉本店)、笹正宗(笹正宗酒造(株))、清水正宗(清水屋(名))、朝日正宗(檜山酒造(株))、稲里正宗(磯蔵酒造(有))、菊冠正宗(金門酒造(株))、白菊正宗(白菊酒造(株))、剣正宗((株)安井酒造店)、徳正宗(萩原酒造(株))、国光正宗(星野酒造(株))、晃山正宗(北関酒造(株))、十一正宗(森戸酒造(株))、雄東正宗(杉田酒造(株))、赤城正宗(近藤酒造(株))、浅間正宗(浅間酒造店(株))、分福正宗(分福酒造(株))、牡丹正宗((株)岡田酒造店)、旭正宗(内木酒造(株))、吾妻正宗((株)小山本家酒造)、宮正宗((株)小山本家酒造)、渦巻正宗(玉井酒造(株))、喜勇正宗(横田酒造(株))、金大星正宗(丸山酒造(株))、黒松正宗(日本酒造(株))、武甲正宗(武甲酒造(株))、稲花正宗(稲花酒造(有))、ふさ正宗((名)石野商店)、黒潮正宗((名)石野商店)、甲子正宗((株)飯沼本家)、糀善正宗(馬場本店)、高砂正宗(高砂酒造(株))、金婚正宗(豊島屋酒造(株))、丸眞正宗(小山酒造(株))、鮎正宗(鮎正宗酒造(株))、お福正宗(お福酒造(株))、スキー正宗((株)武蔵野酒造)、初日正宗(長谷川酒造(株))、不二正宗(瀧沢酒造(名))、緑川正宗(緑川酒造(株))、美雪正宗(諸橋酒造(株))、クツワ正宗(宮崎酒造(株))、関正宗(林酒造場)、兼六正宗((株)金谷酒造店)、手取川正宗((株)吉田酒造店)、登代正宗((資)山本酒造本店)、能登正宗(島屋酒造(株))、福正宗((株)福光屋)、気比正宗(敦賀酒造(有))、竹正宗(金鱗酒造(有))、羽二重正宗(常山酒造(資))、有泉正宗((資)有泉酒造店)、甲州正宗(腕相撲酒造(株))、榊正宗((株)横内酒造店)、笹正宗(笹本酒造(株))、登美正宗((有)石川酒造店)、アルプス正宗((名)亀田屋酒造店)、姨捨正宗(長野銘醸(株))、桂正宗((株)酒千蔵野)、カルカヤ正宗(横綱酒造(株))、北光正宗((株)角口酒造店)、象山正宗((株)宮坂酒造店)、勢正宗((株)丸世酒造店)、養老正宗((株)遠藤酒造店)、柿正宗(五明酒類醸造(株))、神代正宗((有)大坪酒造店)、久壽玉正宗((有)平瀬酒造店)、清松正宗(大塚酒造(株))、達磨正宗((資)白木恒助商店)、斐太正宗(川尻酒造場)、蓬莱正宗((有)渡辺酒造店)、醴泉正宗(玉泉堂酒造(株))、白隠正宗(高嶋酒造(株))、瑞華正宗((株)田中酒造場)、酔泉正宗(山田酒造(株))、豊田正宗(豊田酒造(株))、名古屋正宗(甘強酒造(株))、平勇正宗(渡辺酒造(株))、楠正宗(鈴鹿酒造(株))、富士正宗(平和酒造(株))、三重正宗(元坂酒造(株))、名水正宗(細川酒造(株))、鹿深正宗(望月酒造(株))、鈴正宗(矢尾酒造(株))、道灌正宗(太田酒造(株))、鳰正宗(草野酒造(有))、槍正宗(富田酒造(有))、京正宗(大同酒造(株))、キンシ正宗(キンシ正宗(株))、鶴正宗(鶴正酒造(株))、都正宗(京都酒造(株))、都正宗(相綴酒造(株))、艶正宗(中尾酒造(株))、浪花正宗(浪花酒造(有))、談山正宗(西内酒造)、鞍正宗(西田酒造(株))、谷正宗((株)谷口酒造店)、帝冠正宗((有)中尾酒造店)、御代正宗(島本酒造場)、葵正宗(葵酒造(有))、泉正宗(泉酒造(株))、梅正宗((株)梅正宗酒造)、扇正宗(今津酒造(株))、菊正宗(菊正宗酒造(株))、本嘉納正宗(菊正宗酒造(株))、金正宗((株)松尾仁兵衛商店)、櫻正宗(櫻正宗(株))、大黒正宗((株)安福又四郎商店)、大平灘正宗(井澤酒造(株))、千鳥正宗(岡村酒造場)、皷正宗(安藤酒造(株))、名刀正宗(田中酒造場)、三朝正宗(藤井酒造(資))、春日正宗((資)石州酒造)、高正宗(隠岐酒造(株))、簸上正宗(簸上清酒(名))、矢瀧正宗(清水酒造場)、ヤマサン正宗((株)酒持田本店)、吉備正宗((有)川上庄七本店)、香正宗(香本醸造(資))、三光正宗(三光正宗(株))、巴福正宗(熊屋酒造(有))、平和正宗(下山酒造(資))、牡丹正宗(吉野酒造(株))、一正宗(中国醸造(株))、賀茂政宗(高橋酒造(株))、菱正宗(久保田酒造(株))、三吉正宗(アシードブリュー(株))、一〇正宗(一〇酒造(株))、光栄福正宗(木下酒造(株))、友榮正宗(大丸酒造)、春洋正宗(河野酒造(有))、山木正宗(三好共栄(株))、山丹正宗((株)八木酒造部)、土陽正宗(松尾酒造(株))、勝正宗(勝屋酒造(名))、鷹正宗(鷹正宗(株))、天眞雪正宗(大地酒造(資))

多すぎる。完全にゲシュタルトが崩壊してます。しかもなんとなく、これだけではない気がする。ナントカ正宗ってこんなに多いんですね。わりとちゃんと探しましたが草野マサムネはありませんでした。

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この「〇〇正宗」の由来なのですが、諸説あります。ただ、その中で正宗発祥と言われているのが「櫻正宗」。

日本酒「正宗」のはじまりは、ただのダジャレ??

創業1717年の灘の蔵元「山邑酒造」の6代目、山邑太左衛門は新しい酒の名前に悩んでいたようです。というのも、当時の灘酒は「猿若」や「助六」など俳優に関わる名前を酒の銘柄にすることが流行っていました。

山邑酒造のお酒も俳優の名にちなんで「薪水(シンスイ)」という銘でしたが、お客さんになかなか馴染みません。そこで6代目山邑氏は新しい醸造法を探すとともにその名付けに苦心していた、というわけです。

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ある日、かねてより親交のあった山城国深草の「元政庵」住職を訪ねた時のこと。

机の上に置かれていた経典に書かれた「臨済正宗」の文字。これにハッときたわけですね。「正宗(セイシュウ)」が「清酒(セイシュ)」に似ている事から、 「正宗」を樽印としたのが始まりといわれているのです。そうです、まさかのダジャレなのです。よほど悩んでいたのでしょう。

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しかし、これがまさかめちゃくちゃウケたわけです。

山邑氏は「正宗(セイシュウ)」と読ませたかったようですが「正宗(マサムネ)」と誤読されているうちに、そちらが定着してしまいました。その頃には「正宗」は銘酒として広まり、その人気にあやかろうとした全国の蔵元が次々と「〇〇正宗」を名乗っていったのです。

山邑氏は慌てて商標を登録しようとしましたが、すでに「正宗」は一般的な清酒の代名詞となっており、認められなかったそうです。そこで国華である桜をあしらい「櫻正宗」としたそうな。

本流はどれ??どれが正宗?

「正宗(セイシュウ)」という言葉は、「分家(ぶんけ)」に対して「宗家(そうけ)」という言葉があるように、本流的な意味合いを含んでいます。

山邑氏がインスピレーションを得た「臨済正宗」という文字も、江戸時代に広まった三大禅宗のひとつ「黄檗宗(おうばくしゅう)」を指す言葉です。明末清初の国粋化運動の下で意図的に中国禅の正統を自称して臨済正宗を名乗ったことによるとされています。

日本酒の本流、ホンモノですからよくできた銘なわけです。

切れ味の良い酒、正宗

「正宗(マサムネ)」といえば、名刀としても有名ですよね。

刀鍛冶の正宗は生没年不詳ですが、鎌倉時代末期から南北朝時代初期に相模国鎌倉で活動した刀工です。日本刀剣史上で最も有名な刀工の一人ですよね。「相州伝」と称される作風を確立し、多くの弟子を育成しました。正宗の人物およびその作った刀についてはさまざまな逸話や伝説が残され、「正宗」の名は日本刀の代名詞ともなっており、その作風は後世の刀工に多大な影響を与えました。

そのような「正宗(マサムネ)」の名は山邑氏が酒を世に出した江戸時代においても当然有名で、「名刀マサムネのようにキレの良い酒」という噂も、人気の後押しに一役買ったことでしょう。たしかに、灘の辛口酒はキレが良いものが多いのかもしれませんよね。

 

さてさて、「〇〇正宗」はかくして日本中に広まっていったのです。

お酒の名前って、本当にいろいろありますよね。

ちなみに菊の司の酒銘は「菊一輪 世界の花の 司かな」という句にちなんで名づけられました。国華である花の王「菊」のように、酒の世界を司る銘酒になるように、との願いが込められています。

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日本酒の銘柄にはそれぞれ十人十色のストーリーがあります。それらを肴にお酒を楽しむのも、またロマンですよね。

では。

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「○○正宗」という日本酒が多いのは、ダジャレがはじまりだった
平井佑樹 HIRAI YUKI

岩手県最古の酒蔵、菊の司酒造16代目蔵元(予定)。
地元盛岡で生まれ育ち、明治大学を卒業後ブーメランで蔵入り。
日本酒「菊の司」「七福神」の他にオリジナル「平井六右衛門」を醸してます。
1991年10月12日生まれ。たまの休日はデジイチさんぽ。
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