やっぱりぬる燗が最高??酸の効いている酒が“アツ”い!!
やっぱりぬる燗が最高??酸の効いている酒が“アツ”い!!

2019.03.9

やっぱりぬる燗が最高??酸の効いている酒が“アツ”い!!

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どーも!ぼんちゃんです!

2月に入り去年の今頃は何をしていたか考えてみたら、ちょうどオリンピックばかり見ていたことを思い出しました。僕が生まれてから一番面白い冬季オリンピックだったので、色んな場面を鮮明に記憶しています。それからもう1年が経ったのかあ、来年はもう東京五輪かあ、月日が経つのは早いなあ、なのに僕はまったく成長しないなあ…なんて考えていたら憂鬱になってきました。そんな憂鬱な日々を助けてくれるのはやっぱり酒。もっと言うと燗酒。僕は夏場でも燗をつけて飲む人間なので…(デジャヴ)

はい、ということで前回から引き続き燗酒特集です。今回は歴史とか文化からは離れた内容ですが、燗酒を語る上では外せない内容なので、熟読していただけると幸いです。

日本酒の味を担う3つの酸

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日本酒には多くの呈味成分(味覚に影響を与える成分)が含まれています。特に影響が大きいのは、乳酸・コハク酸・リンゴ酸の3つの有機酸です。日本酒に含まれる有機酸類の80%をこれらの酸が占めています。皆さんが今までに飲んだことのある酒を思い浮かべてみてください。大体この3つの酸で大系的な分類をできるはずです。ヨーグルトを連想するような乳酸が効いたまろやかな酒。じっくりと旨味を楽しめるコハク酸の効いた燗上がりする酒。冷酒ですっきりとした酸味を楽しめるリンゴ酸が効いた軽快な酒。いかがでしょうか、イメージできましたか?「イマイチわからないなあ…」という方には、当蔵の以下3商品の飲みくらべをおすすめします。

純米酒菊の司吟ぎんが仕込

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生もと純米酒菊の司亀の尾仕込

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純米生原酒菊の司亀の尾仕込

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ちなみに日本酒の呈味成分は世界の酒類と比較しても各段に多いと言われています。それが全国約1500蔵の酒それぞれに色をつけてくれる大きな要因なのです。前述した3つの酸の他にも様々な呈味成分が複雑に介在し、私たちの舌を楽しませてくれます。自分の好きな酒をうまく表現できない方は、そういった味わいの違いをチャートなどに可視化してみるのも良いかもしれませんね。

酸の適温実験

「清酒に含まれる有機酸の酸味と飲用温度の関係」(『日本醸造協会誌』106巻11号)という論文に、面白い実験が書いてあります。実験の中身は、リンゴ酸・コハク酸・乳酸をそれぞれ溶かした水溶液を、10人のパネラーが様々な温度帯でテイスティングする官能評価です。それによると乳酸・コハク酸・リンゴ酸すべての水溶液において、37℃(人肌燗)~43℃(ぬる燗)の温度帯が好ましい酸の味わいという実験結果になったようです。それを見た単細胞の僕は「なんだ、やっぱり燗が最高かつ最強じゃん」と思うわけですが、それで終わってはつまらないのでさらに掘り下げてみましょう。

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日本酒には利き酒という文化があります。以前きくつかこらむで「利き酒師」に関する記事を上げていますが、要するにテイスティングのことです。この実験もテイスティングですが、利き酒とテイスティングには1つ大きな違いがあります。それは「減点方式」という点です。要するに粗探しをするということですね。実際に日本酒を飲む時も、僕がひねくれているだけかもしれませんが、良い所よりも悪い所(オフフレーバー)が先に気になってしまいます。そういう視点で考えると先程の実験結果は、「おいしい温度帯」で3つの酸を区別するより、「不味い温度帯」で区別した方が、違いをはっきり認識できるのではないでしょうか。

それぞれの水溶液には37~43℃以外にもおいしく感じる温度帯がありますが、同じ温度帯でも逆に不味く感じる水溶液があります。下の図がその相関関係をまとめた表です。

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あくまでも簡易的に印をつけたものなのでそれぞれの感想の中身は違うわけですが、50℃以外はどの温度帯にも一長一短あることがわかります。例えば10℃花冷えは乳酸が「刺激的な酸味」を感じる一方、リンゴ酸は「爽やかで軽快な酸味」を感じさせます。37℃ではどの酸においても肯定的な感想が目立つものの、コハク酸では「後味に苦み」、リンゴ酸では「ややぼけた酸味」を感じる人がいたようです。嫌いなフレーバーが食べ物に対するイメージを決定づけるとしたら、こういった些細な違いは重要ですよね。

さらにここで大事になってくるのが、3つの酸はすべて酒の中に含まれているという点です。この実験では3成分混合の水溶液でも実験が行われています。

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ここで初めて50℃に○がつきましたが、43℃・50℃においては感想として「しっかりとした酸味」という言葉が目立ちます。僕らが想像するような燗酒のイメージに近いと思いませんか?単体水溶液では37~43℃で概ね高評価を受けていましたが、混合水溶液では50℃でも肯定的な感想を持たれていることからも、基本的に主要酸味成分は燗にして真価を発揮すると言えるのではないでしょうか。

ちなみに日本酒の中にはアミノ酸、主にアラニン・グリシン・アルギニンが多く含まれていて、その官能評価も同じように行われています。常温(20℃)とぬる燗(43℃)で比較した結果、やはりぬる燗にすると柔らかい、あるいはマイルドになるという評価が得られ、それと共にオフフレーバーも軽減されたようです。

価値観にとらわれない楽しみ方

我々が実際に口にするお酒の中にはより多くの呈味成分が含まれているので、一概に「燗酒にした方がお酒はうまい」とは言えません。例えばメロンやマスカットに形容されるフルーティな香りのする酒。黙って冷やして飲んだ方が絶対においしいです。味覚的な感性でもそう思いますが、その香りの原因物質である「カプロン酸エチル」は、加熱すると脂肪酸が苦みを感じさせるという化学的な根拠もあります。

年配の酒飲みの先輩方が「燗酒は安酒だろ?」と言っている現場をよく目にします。燗をつければおいしくなるのはその通りかもしれませんが、酒が多様化を見せるこの時代。是非ともそういった価値観にとらわれず、色んなお酒を色んな形で飲んでいただければと思います。

食べ物における適温

そもそも酒に限らず食品にはそれぞれに適した温度帯があります。例えばラーメンは絶対に出来立ての熱々が美味しいですし、アイスキャンディーは冷たい方が美味しいに決まっています。一般的なビールもめちゃくちゃに冷やして、カ●ジみたいに「キンキンに冷えてやがる…!」とか言いながらグイグイ飲みたいですよね。そういった感覚は「体温を中心に±25~30℃の範囲とされている」(「清酒に含まれる有機酸の酸味と飲用温度の関係」、『日本醸造協会誌』106巻11号より引用)らしく、ホットコーヒーやスープなど温めて飲み食いする物は58~70℃の範囲を外れると、ぬるい、または熱すぎると感じてしまうようです。

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では酒類はどうなのか。例えばビールは気温が高くなればなるほど、それに比例してより冷たい温度が適温になることがわかっています。だから夏場の消費量が伸びるわけですね。ワインに関しては呈味成分との兼ね合いから5~20℃が適温とされているようです。赤と白で飲酒時の適温が違うそうですが、ワインセラーは16℃前後に設定されていることが多いので、やはり理にかなっています。

肝心な日本酒の適温ですが、冷酒・冷や酒・燗酒と温度帯の違いがあるように、日本酒という大きな括りで見るとかなり幅広いです。10℃以下で冷やして飲む酒もあれば飛びきり燗(55℃くらい)でおいしい酒もありますから、数字で表記すれば10℃~55℃となるわけです。70℃まで熱しても味が崩れない酒も稀にあるくらいバラエティー豊かです。しかし全部の温度帯で最高においしい!という酒はほとんどないと思います。少なくとも僕は出会ったことがありません。同じ日本酒、同じ蔵元のお酒でも商品によって楽しみ方が違う。それが日本酒の醍醐味なのです。

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ぼんちゃん

2017年入社。 「人生なんとかなるよ」と言い聞かせ、のらりくらり生きてる。
連載「教科書には載っていない、日本酒の歴史。」では、
誰もが聞いたことがある日本の歴史舞台の裏側、当時の日本酒エピソードをご紹介していきます。

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