
2019.04.19
こんちは!
酒粕は真っ白でなければいけない?
いえいえ、黒い酒粕も存在するのです!この色の違いは、菌のチカラが深く深く関わっていることをご紹介しましょう。
清酒にするためには、醪(もろみ)を搾り、透き通ったお酒だけを抽出しなければなりません。今回の主役である酒粕はこの工程で登場するわけですが、清酒造りが目的である以上、酒粕はあくまでも副産物です。とはいえ、ここ最近、TVや雑誌などのメディア上で酒粕はとってもHOTな存在。長年の酒粕愛好者から言わせれば、「いまさら?」なんて声が聞こえてきそうですが…。
やはり注目するところは、その栄養成分の多さに有ります。
日本の伝統食には味噌、醤油、漬物など、菌のチカラを借りる発酵食品が多く存在します。日本酒もそのひとつですが、こういった微生物の働きで原材料に含まれる栄養価より、発酵後の栄養価の方が高いことに驚かされます。
お酒の原料にもなる、うるち米と比較してみると、食物繊維・たんぱく質・脂質・ミネラル・ビタミン・ナイアシン・葉酸がズバ抜けた数値で上回っているのです。
その中でも血をつくる働きに関係する「葉酸」は、うるち米に含まれる成分量のなんと約56倍!貧血予防はもちろんのこと、動脈硬化の予防にも効果が期待されていることから、健康なカラダづくりを目指す上でこの事実を無視することはできないでしょう。
酒粕の良さを簡単にアピールしたとこで、いよいよ本題に入っていきます。
酒屋さんやスーパーでも酒粕を目にする機会はあると思いますが、多くの皆さんが思い描く酒粕は「白」でしょう。透明な液体に仕上がる日本酒を想像すれば、そうなりますよね?
ところが、ごくまれに、黒い酒粕が流通するのです。
この黒い酒粕は、食べても人体には全く影響が無いことを先にお知らせしますが、褐色部分や黒い斑点があることで品質の劣化や黒カビ、異物混入など、その見た目ゆえに消費者さまへの不安感を招いていることは確かでございます!
この不安感を取り除くため、白黒つけようというのが今回の目玉!
原因は麹にあり!?
黒い酒粕になる主な原因は、麹菌の種類に関係します。
日本酒造りでは、デンプンを糖に分解する酵素力の強い麹菌が使われることを前提にお話を進めていきましょう。ちなみに、醤油や味噌にはタンパク質を分解し、うま味成分となるアミノ酸をつくる酵素力の強い麹菌が使われるそうです…参考までに。
この麹菌というのは、全国の酒蔵さんが全く同じ種類のもの使っているわけではなく、追い求める理想の酒質によって数ある麹菌の中からセレクトしているのです。麹が生産する酵素はデンプンを分解するアミラーゼとタンパク質を分解するものがあり、この酵素力価のバランスが、味や香りに大きく影響していきます。
吟醸酒など香気成分や軽快さといった特徴を得る場合、醪(もろみ)中のグルコースを高濃度に保つことのできる麹菌を選択します。このグルコアミラーゼの活性が強い麹菌は、黒い斑点の原因であるチロナーゼというものも同時に活発化させてしまいます。これが褐変の引き金となり、褐色や黒い斑点が酒粕に出てくるのです。
すなわち、黒粕は技術不足や品質の管理不足で生まれるものではないのです。
また、褐変がみられる麹菌の特徴は繁殖力が旺盛で麹がつくりやすいといわれています。そのため、良い麹が出来た目安となる焼き栗の匂いにも似た栗香の生成も多くみられ、ゆえに醪の経過も順調で健全酒となるのです。
香気成分を蓄えた黒い酒粕。例外もありますが、大半は吟醸粕に多くみられ、吟醸の全体仕込み量の少なさゆえに、黒粕はさらに希少な存在となります。香りが高いことから、洋食料理やスイーツに合うと評判です。
しかし、売られている酒粕のほとんどは正味1kg。
家庭で使うには少し量が多い…毎日使うかといえばそうでもない…でも使いたい。
酒粕は立派な発酵食品。アルコール(8%程度)が含まれているため、賞味期限は以外と長く、冷蔵保存であれば3~6ヶ月はお使いいただけるでしょう。よっぽど乾燥した場所に置いとかない限りはカビることはないのです。
とはいっても、酒粕の中には生きた微生物がいるため、黒い酒粕を含め,白い酒粕も熟成は進みます。全体的な褐色はアミノ酸などの旨味成分が出はじめているというサイン。熟成粕は風味も豊かであることから粕汁や粕漬けなどお料理におススメです。あえて熟成させる、常温保存もアリかもしれませんね。
真っ白な酒粕になるか、黒い酒粕になるかは、蔵が想い描いているお酒の味わいによって
麹菌を選んでいることが深く関係しています。この黒い酒粕が生まれる理由は少し複雑で難しい内容でしたが、けっして技術不足や品質管理を怠って生まれたものではないということです。
酒粕があなたの健康の秘訣となりますように想いを込めて!今後とも日本酒の更なる周知に向けて頑張りたいと思います。どうぞ宜しくお願いします!
それでは、第15弾いきましょう!
菊の司酒造営業部2017年入社。一期一会を大切に 和の心を広めていきたいです。
連載「まっさんの日本酒かるた」では、遊びながら日本酒に触れられる日本酒かるたの完成をめざして、
日本酒に関わるワードをわかりやすくご紹介していきます。