日本酒の器にこだわるなら漆の盃の魅力に気付いてほしい
日本酒の器にこだわるなら漆の盃の魅力に気付いてほしい

2019.05.20

日本酒の器にこだわるなら漆の盃の魅力に気付いてほしい

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まいど!ゆーきです。

日本酒を飲む時、どんな器を使っていますか?

ワインなんかも特にそうなのですが、日本酒って酒器によって香りや味わいの感じ方が全然違うんです。

よく、居酒屋でお酒を注文すると、

日本酒_注ぎこぼし

こんな感じとか、

徳利と猪口

こんな感じとか、

ワイングラス

こんな感じで提供されることが多いと思います。

最近は「冷酒ブーム」なのかなっていうくらい冷やして飲むお酒が多いので、マスの中にグラスを入れて注ぎこぼすスタイルや、ちょっとおしゃれでこだわった飲食店なんかだとワイングラスで提供するお店も非常に増えてきているなあという感覚です。

では、おうちの場合はどうでしょうか。

お父さん湯飲み

ぼくは学生時代、家で日本酒を飲む時は100均の徳利&お猪口か、某携帯会社から突然送り付けられてきた某お父さんの湯飲みで、大人の時間を嗜んでいました。実際、家飲みはその辺のコップで済ませちゃう、って人も割と多い気がします。

さすがに、今は湯飲みで日本酒を飲むことは無くなりました。

よく使っていたのはワインタンブラー。ワイングラスの脚が無いやつですね。

ワイングラスって構造上、色・香り・味わいを楽しむのに優れているんです。特に香りと甘味を感じやすい。ワインの場合は手の温度で温まると味が変わるので脚がついている方がベターですが、日本酒の場合はむしろ温めたい時もあるので、かえって使い勝手がいい。洗う時怖いですし。

それが、最近、ほとんど使わなくなりました。漆のお猪口に出会ってしまったからです。

なぜ酒器で日本酒の味わいが変わるのか

日本酒って造る時ももちろん大事なのですが、その後が肝心だったりします。

というのも、どれだけおいしいお酒を造っても、搾った後の貯蔵管理や流通、飲み手との相性(売り方)、ペアリングや温度などの提供方法、そして酒器によって、全くと言っていいほど違う印象になります。保管や流通なんかはぼくら酒蔵や酒販店さんの努力次第なのですが、食べ合わせだったり飲用温度、酒器で本来の日本酒を味わえないのは非常にもったいないことだと思いませんか。

酒器_骨董

酒器って結構大事で、同じお酒でも感じ方がだいぶ違ってきます。

主にチェックしたいポイントは3つです。

sake_utsuwa1

ひとつめは酒器の「容量」。

これが意外と盲点で「ひとくちで口に含みたくなる量」に関係があります。

ビールジョッキ_サラリーマン

たとえばビールジョッキは「がぶがぶ飲む」ことを前提にして、いわゆる中ジョッキなら350~500ミリリットル入るようになっています。逆に、一般的なお猪口は30~60ミリリットル。「注ぎこぼし」スタイルのマス&グラスだと形状によりますが160~180ミリリットルくらいが多いと思います。

日本酒やワインは、ほっぺで味わう飲み物ではなく、舌やせいぜい下っ歯の内側に流れ込むのが利き酒の理想。ちょっと口に入れば十分なので、容量の小さい酒器が良いのです。

ちなみに、ベストな飲用温度のうちに飲みきれるか、という観点からみても日本酒の酒器は大きすぎない方がベター。冷酒は冷たく、お燗は熱く味わいたいものですもんね。

sake_utsuwa2

ふたつめは酒器の「形状」。

これは2つの意味があって、「唇との接地=酒器の口径」と「香り成分の感じやすさ=酒の表面積」です。

口径が広い平盃のような酒器ほど、くちの形は「あ」に近くなり、舌は平らに、上あごは高くなります。ほっぺや上あごはお酒を酸っぱく感じる性質があるので、平らな舌の上になだらかに流れる平盃は、お酒をまろやかに感じることができる、というわけです。小さいお猪口だと「う」のくちになりますので、その逆です。

ワイングラス_パーティ

また、液面の表面積が広いほど、揮発成分である香りが感じやすくなります。

日本酒でよく使われる酒器ならば平盃がもっとも香り成分が揮発しやすいことになります。また、ワイングラスは多くがつぼみ型をしており、お酒の表面積が広く揮発した香りをつぼみの内部に留めておくことができるので、香りを楽しむことに関してはスーパー優秀です。ですから、ワイングラスでお酒を楽しむ時は、つぼみのふくらみまで注ぐのが正解。

ただし強すぎる香りは刺激的になることも多く、香り成分は温めると揮発しやすくなるため、お燗酒をワイングラスで飲むことはおすすめしません。あまりいないとは思いますが。

sake_utsuwa3

そしてみっつめが「素材」。

これが今日、一番言いたいことです。

酒器、もっと言えば食器に使われる素材は実にさまざまですよね。先ほどから紹介しているワイングラスは「ガラス」ですし、平盃やお猪口の多くは「陶器」や「磁器」。金属系もあって「錫(すず)」や「銅(どう)」もお燗をあたためる際のちろりにはよく使われています。

素材が味わいに影響するのは「温度の伝え方」「耐久性」が主なところでしょうか。

DSC_0042

お燗に便利なちろりに錫や銅を使うのは、熱伝導率が良いからです。湯煎でお燗をつけるとき、より早くお酒を温めることができるわけですね。

逆に、これらの素材は酒器としてはあまり向いていません。冷酒は手の温度でぬるくなってしまうし、熱燗は熱くて持てませんからね。逆手にとって、体温に近い形でお酒を楽しむ場合には錫の猪口は魅力的ですが、あまり一般的ではありません。

ガラスもまあまあ熱を伝えるので、熱いものを入れると結構熱い。基本的には冷酒専用です。そう考えると、伝統的に日本酒の近くで活躍してきた陶器や磁器はオールラウンダーです。ただし、ガラスと一緒で割れるリスクがあります。

食器棚の奥に寝ている漆器は今すぐに引っぱり出して使うべき

漆器_酒器

今回のこらむは「漆器」のヤバさに気付いていない人にこそ読んでいただきたいのですが、漆器の魅力は1回や2回使ったくらいでは、正直言ってわかりません。

せいぜい「キレイなツヤだねー」とか「日本らしくてイイねー」とか、そんなもんだと思います。

なぜ漆の酒器がすごいのか。

まず、割れません。

漆器のほとんどは、木で作られた型に漆を何層にも塗って完成します。つまり、よほどの衝撃や、急激な乾燥でひび割れを起こさない限り「壊れることが無い」のです。

割れない、という安心感は思っている以上に大事。

最近は「マイ酒器」を持って飲み歩く人も増えていると聞くので、壊れない酒器は持ち運びにも便利です。素材が木なので軽いのも嬉しい。

そして、育ちます。

皮製品と同じように、大事に使っていくとだんだん表情が付いてきます。細かなキズも含めて、漆の塗装が馴染んできたり、ちょっとハゲて下色がうっすら透けてきたり。自分だけの酒器に育っていくのです。

こんな楽しみ方は他の酒器ではできませんよね。

漆器_いろいろ

また、熱を通しません。

漆器は非常に断熱性に優れています。熱燗を注いでも熱くて持てないということもなく、冷めにくいのが特長。冷酒もぬるくなりにくい感覚があり、お酒をゆっくりと楽しむことができます。

お猪口だけではなく、片口も漆器は幅広くバリエーションがあるので、特に熱燗好きの方にもおすすめです。

ぼくは、たぶん同年代の他の人よりお酒を飲む機会が多いのですが、最近家で飲む時はほとんど漆の器を使っています。軽くて手に馴染むし、漆器が育っていくのが非常に楽しい。

お正月のお屠蘇用に、とかしまい込んでしまっている漆器、もったいないですよ。

漆器はスポンジと洗剤でOK!紫外線には気を付けましょう

漆器のお手入れが大変そうで敬遠している方も多いのでは。ぼくもそうでした。

実際は、他の食器と同じように洗剤で洗ってOKです。やわらかいスポンジか手で洗いましょう。

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しかし、漆には唯一弱点があって、紫外線はNGです。紫外線に当てると漆に含まれている成分が分解されてしまい、塗りがはがれて劣化してしまいます。また、急激な乾燥でもひび割れを起こすので、保管場所だけ注意しましょう。

それ以外は、昔からある優秀な自然塗料なのでふつうに扱っていれば問題ありません。

日本酒を飲んで漆を応援しよう

漆は縄文時代からの歴史を汲む、ひとつの文化です。

日本酒は弥生時代からですが、漆と同じく、大陸から伝えられた技術をベースに、職人たちが磨き上げて伝承してきた、現代に残る日本のものづくりです。

ぜひ、日本酒の器にこだわりを持っている方にこそ、漆の酒器の魅力に気付いていただきたいと思っています。

菊の司酒造では(株)浄法寺漆産業さんとコラボして「膠漆の交わり(こうしつのまじわり)」というプロジェクトを進めています。実は日本の漆器の7割が岩手県産の漆で、岩手県は漆器の生産量が日本一。このコラボ商品の漆器は特産の国産漆を100%使用した珍しい白い漆で塗った平盃で、ウチのお酒を楽しんでいただくセットです。

マクアケ2

お酒は、平成23酒造年度に造った鑑評会出品用の山田錦大吟醸酒を瓶の中でじっくり低温熟成させた特別な古酒です。

瓶に詰めた状態で熟成させることで、お酒が空気に触れる面積を最小限にし、酸化を防いでいます。また、黒瓶にすることで光による劣化を防止し、低温で貯蔵することできめ細やかな熟成感に仕上げました。本来の大吟醸らしい品格を持ち合わせながら、カラメルやナッツのような奥深い熟成感が特長です。

マクアケ4

漆の特長を活かし、お酒をおいしく楽しめる特別なコラボレーションです。

5月30日までクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」にて支援を募集しています。リターンとして、一般の販売に先駆けてお届けいたします。岩手の職人さんが3カ月もの時間をかけて仕上げた、世界にひとつだけの平盃をお楽しみください。

膠漆の交わり_こらむ

また、このプロジェクトの売上の一部はNPO法人ウルシネクストさんに寄付し、ウルシの植栽や種蒔きなど、漆を未来へ伝える活動にご活用いただきます。

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実は国内に流通している漆の中で、国産のものは3%しかシェアがありません。ほとんどが主に中国からの輸入モノになっているのが現状。

漆掻きや塗りをする職人さん、道具をつくる職人さんも減少し、非常に厳しい状態です。文化庁からの指導で、日光東照宮や金閣寺などの重要文化財の補修に国産漆を使うようになりましたが、今度は「ウルシノキそのもの」が無いのです。

2トンほどの需要に対して、1トンほどしか生産できていないそう。

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実際、ウルシを増やしていく活動はかなり大変です。まずは土地探し。ウルシの「かぶれ」も配慮しながら、良質な漆液を採取できる環境を探していかなければなりません。さらに、種の発芽率の低さなど、ハードな課題も多いのです。ぼくもウルシの植栽と種蒔きに参加してきたので、その時の様子は「2%の奇跡。ウルシの植栽&種蒔きに参加してきました」を読んでみてください。

酒器としてとても優れている漆ですが、せっかくなら国産の漆器で日本酒を楽しみたいですよね。

日本酒を愛するみなさま、漆器で飲んで応援のほど、よろしくお願いします。

膠漆の交わりマクアケ_バナー

いかがでしたでしょうか。

今回は酒器で変わる日本酒の味わい、そして酒器としての漆の魅力についてまとめてみました。

せっかくのおいしい日本酒、器選びからこだわってみてはいかがでしょうか。

では。

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日本酒の器にこだわるなら漆の盃の魅力に気付いてほしい
平井佑樹 HIRAI YUKI

岩手県最古の酒蔵、菊の司酒造16代目蔵元(予定)。
地元盛岡で生まれ育ち、明治大学を卒業後ブーメランで蔵入り。
日本酒「菊の司」「七福神」の他にオリジナル「平井六右衛門」を醸してます。
1991年10月12日生まれ。たまの休日はデジイチさんぽ。
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