
2019.06.18
こんにちは!風香です。
最近は気温も日ごとに高くなり、すっかり夏らしくなってきましたね。
私は暑さはそれほど得意ではないのですが、モコモコの入道雲を見ると妙に気分が沸き立ちます。
しかし、気温が高くなってくると夏バテ、夏風邪、熱中症などが心配になるもの。
今回は、そんな暑い日にお勧めしたい夏越しの酒…即ち、甘酒に関するお話です。
夏越し(なごし)とは、旧暦6月30日の晦日の日に行われた祓の行事のことです。半年分の穢れを落とす行事で、この後の半年の健康と厄除けを祈願します。
この祓の由来は神話のイザナギノミコトの禊祓(みそぎはらひ)にまで遡るそうな。
水無月大祓とも呼ばれるこの行事は、6月に良く見られた稲や麦への病虫害を払うという意味合いを持ち、宮中から民間にかけて広く行われていた祓の1つでもあるとされています。暦に移った現在でも、6月下旬に日本各地の神社で行なわれている伝統行事です。
ところで、6月ごろになると神社に設置される「茅の輪」をご存知でしょうか?ご近所では盛岡八幡宮などで見ることが出来る、大きなわっかです。
これも夏越しには欠かせない物で、決められた順路で輪をくぐり、氏神にお参りすることで厄を払うという大切な役割を持っています。
➀茅の輪を左回りでくぐります
②右回りでくぐります
③もう一度左回りでくぐります
④中央を通り神前に進み、参拝をします
“水無月の 夏越の祓する人は 千歳の命 延ぶといふなり(『拾遺集』よみ人しらず)
”
神社でのお祓いを終えた後、身を清めた人々は甘酒や甘酒で蒸かした「なごしまんじゅう」を食べ、豊穣や健康、長寿を祈願していたとされています。
さて、タイトルにもある「夏越しの酒」は「夏越しの時期に飲む甘酒」である事は皆さん何となく察せる事と思います。
では、何故ただのお酒ではなく「甘酒」を態々この時期に飲んでいたのでしょうか?
甘酒の起源は、日本書紀に記述されている天甜酒(あまのたむざけ)と考えられています。
平安時代の頃には、宮中では夏越しの時期に毎日甘酒を共する習慣があり、また特に熱い夏場には氷で冷やした甘酒を飲んでいました。
甘酒が庶民に広く普及したのは江戸時代になってから。「甘酒売り」が登場し、暑い夏の夏バテ予防として親しまれるようになりました。
甘酒売りは水売り、ひやっこい売り、とも言います。
時代劇などで
「ひやっこい、ひやっこい~」
と歌いながら通り過ぎる町人を見たことはありませんか?あれです。
栄養豊富な甘酒は体力回復、夏バテ防止に効果的な夏の栄養ドリンクであったことから、江戸幕府は甘酒の価格を最高で4文(現代の金額に換算すると大体50円くらい)に制限し、庶民が買い求めやすいようお触れを出しました。また、武士の内職としても甘酒造りが盛んに行われていたといいます。
甘酒の嬉しい効果、美味しい作り方は「蔵人直伝!だれでもつくれる砂糖不使用カンタン甘酒」をご参考に。
現代における甘酒といえば、「冬に体を温めるために飲むもの」というイメージを持つ方も多いはず。
しかし、「甘酒・あまざけ」は俳句や川柳においては夏の季語として用いられます。
これらのことから、現在の「甘酒は冬の飲み物」というイメージとは異なり、夏に親しまれていた飲み物であったことがうかがえます。
さて、夏バテなど暑い季節に真価を発揮する甘酒。どうせなら季節にあった美味しい飲み方で飲みたい!
夏ならスッキリ、サッパリとした感じなら…いいのでは?
そんなわけで、経緯は省きますが「甘酒を夏の飲み物で割ったらスッキリサッパリ飲めるのでは」という考えに至りました!
どんな飲み物で割れば美味しくなるのか、またもや実験してみたいと思います。
今回検証したのは以下の飲み物です。
ポッカレモン100
牛乳
カルピスソーダ
カルピス(濃縮タイプ)
三ツ矢サイダー
キリンレモン
コーヒー
さて、この中で甘酒との親和性が高かったのは…?
ポッカレモン100、カルピス(濃縮タイプ)、コーヒーの3つ!
ポッカレモン100はコップ一杯の甘酒に3~4滴加えると、甘酒の甘みが引き立ち、さっぱりとした風味で飲みやすくなりました。
カルピス(濃縮タイプ)は、甘酒:カルピス=5:1程度の比で混ぜ合わせるとマイルドな味わいに変化しました。乳酸菌飲料との相性は良いのではないかと何となく感じていましたが、その予想は間違いではなかったようです。
そして、意外に相性がよかったコーヒー。
甘酒:コーヒー=1:1で混ぜ合わせると、黒糖のような味わいに!麹や酵母の風味が苦手な方でも飲みやすいのではないでしょうか。
しかし!
これらのアレンジをはるかに凌駕する夏向けの甘酒の飲み方が存在しました。
それは…
小細工不要!やはり甘酒は甘酒のまま飲むのが一番美味である!!
実験の前提が破綻してしまいますが、下手に手を加えない甘酒が一番美味しかったです。何事も初心が大事という事でしょうか。
一方、あまりおいしくない組み合わせだったのが炭酸飲料と牛乳です。
カルピスソーダなどの炭酸飲料は甘味料が多く含まれているため、甘酒の甘さと競合し、些かくどい甘さとなってしまいました。
また、牛乳はカルピスと同様の結果になると思われたものの、牛乳の主張が激しく上手く甘酒と融合しないという残念な結果に。乳製品との組み合わせは、乳酸菌飲料を用いると相性がよいのやもしれません。
今回は試しませんでしたが、巷では果物と合わせてスムージーにしたり、お茶で割る等のアレンジも見受けられるようです。
是非皆さんもアッと驚く甘酒アレンジ、研究してみてください。
さて、夏にうれしい甘酒「夏越しの酒」のおはなし、いかがだったでしょうか?
冬の飲み物というイメージが強い甘酒ですが、暑い日にキンキンに冷やして、氷の音を響かせながら一杯。なかなかオツなものですよ。
夏バテ対策、暑気払いにはぜひ夏の甘酒をお楽しみください。
それでは、今回はこのあたりで。次回もまたよしなに。
2019年商品部入社。
元分子細胞生化学専攻の理系。理系ですが歴史や軍記物の読書が趣味です。本コラムでは歴史や文化、古典に時々科学をまじえながら「食卓の外の日本酒の話」をしたいと思います。