酒茶論に学ぶ!「上戸と下戸」のはなし
酒茶論に学ぶ!「上戸と下戸」のはなし

2019.08.27

酒茶論に学ぶ!「上戸と下戸」のはなし

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こんにちは!風香です。

梅雨も過ぎ去り、夏休みも本番に突入。朝早くから子供たちの元気な声が聞こえてくる季節となりました。大人の皆様は祭りに帰省に暑気払い、何かとお酒を飲む機会が増えてきたのではないでしょうか?

飲める人には嬉しい、飲めない人にはちょっと億劫な酒の席。この飲める人飲めない人を「上戸」、「下戸」っていいますよね?この言葉には奥深い歴史と、面白いエピソードがたくさん詰まっているんです。そんなわけで今回の風香の小話は「上戸と下戸」にクローズアップした古典調でおおくりしたいと思います。

上戸と下戸のはなし

上戸と下戸、この言葉の歴史は深く、古くは平安時代頃から使用されていたといわれています。

一説によると、農民の戸口を富の多少によって上戸、中戸、下戸と分けていたことを由来としたようです。この富の多少は婚礼などで「お酒を出せる限度量」に直結し、上戸の家なら8かめ、下戸の家は2かめなどの取り決めがありました。これが転じて酒をたくさん飲める人のことを上戸、逆に飲めない人を下戸というようになったといわれています。

現代においては、そのまま酒を飲める飲めないを現すほか、笑い上戸や泣き上戸などお酒に酔った時の様をあらわす慣用句としても用いられています。

上戸と下戸の争いは古来から

お茶

物事の出来る出来ないがある以上、諍いごとを避けれぬのが人間というもの。

例に漏れず、上戸と下戸の間でも仕様がない言い争いが古来より行われてきました。

そんな言い争いを記した古典は、世界中に点在しています。

日本においても、中国の唐の時代に記された「茶酒論」を祖に酒茶論、酒水論、酒飯論、酒餅論などなど、多くの上戸と下戸の言い争いを記した古典が残されています。

どのお話も酒(上戸)と茶や飯(下戸)がどちらが優れたものであるかを競い合い、最終的に第三者によって窘められる…といった内容になっています。

今回ご紹介するのは戦国時代に御寺の和尚さんが書いた「酒茶論」

原文は些か読みにくいので、現代人向けに少々アレンジしてみました!

上戸の忘憂君と下戸の滌煩子が言い争いをするところから物語は始まります。

ライン1

ヒートアップしていく忘憂君と滌煩子。

ライン2

ここで、一閑人という通りすがりの暇人が仲裁に入ります。

ライン3

かくして、二人の論争は丸く収まりましたとさ。

余談ですが…中国の茶酒論では最後に水が登場し、

「酒も茶も、水がなければ形にならないじゃん!やっぱり、水が一番だよね!」

と火に油を注ぐ様な発言をして幕を閉じます。 

どちらかが偉い、崇高である、などということはない。

どちらにもそれぞれ良さがあり、それは同じ土俵で比べられるものではない。

対比するものは違くても、酒茶論の一閑人の主張をはじめとしたこれらの古典は、一様にこのような結論を述べています。

最近では飲める人、上戸は偉い、みたいな風潮もまことしやかに見られますが…昔は「下戸の中の下戸」を決める勝負なんかもあったようで、酒を一舐めしただけで卒倒する人を「酒にも汚されぬ清い人」と称える催しもあったそうな。

たかが酒の飲める飲めないで争わないように!

昔からずっと言い続けられているほど、お酒は問題に上がりやすいものだったのかもしれませんね。

上戸と下戸の分かれ目

お酒

さて、なぜ人は上戸と下戸、即ち「酒をたくさん飲んでも平気な人」と「酒を少量しか飲めない、もしくは全く飲めない人」に分かれるのでしょうか?

その原因の1つに遺伝子が挙げられます。

お酒を飲んだ時、気分が高揚したり、体温が高くなったり、頭痛や吐き気、酩酊感などの症状が現れますよね?

体内に吸収されたアルコールが肝臓などで分解されると、アセトアルデヒドという物質が生じます。これが体中を巡り蓄積されると、動悸や頭痛などのいわゆる「酔い」の症状の原因となるのです。

このアセトアルデヒドは、「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)」により酢酸に分解され、その後水や二酸化炭素にまで分解され、人体に無害な物質として体外に排出されます。
アセトアルデヒド脱水素酵素が多くあればあるほどアルコール分解速度が速くなり、酔いにくいということになります。

肝臓内

アサヒグループHP(https://www.asahibeer.co.jp/)より引用

アセトアルデヒド脱水素酵素の体内合成量は遺伝子で決定されています。

そのため、世界にはお酒に強い(アセトアルデヒド脱水素酵素を合成するための遺伝子を持っている)人種とお酒に弱い(アセトアルデヒド脱水素酵素を合成するための遺伝子が少ない、または全くない)人種が存在することになります。

つまり、上戸と下戸の境界線は「アセトアルデヒド脱水素酵素を合成するための遺伝子を持っているか否か」で分けられているのです!

日本人を含む新モンゴロイドはアセトアルデヒド脱水素酵素を合成するための遺伝子を持たない人々の割合が多い種族とされています。元々日本人はお酒に弱いんですね。

お酒の飲める飲めないは遺伝上の特性ですので、たくさん飲めば慣れる、そのうちたくさんの量を飲めるようになる、ということはまずありません。

行事や慣習の関係上、日本では「お酒に弱いが、飲まなければならない」状況になることも多いかと思います。

上戸の皆様は他人に自分のペースを勧めない。

下戸の皆様は無理をせず、自分の体調と相談しながら飲む。

自分の体質を理解し、互いに楽しくお酒を嗜みたいものですね。

大人の飲み会の嗜みについて、詳しくはこちら!

 

さて、古来より続く「上戸と下戸」のおはなし、いかがだったでしょうか?

上戸、下戸で割り切ってしまうと、酒茶論のように対立してしまいがち。互いの良さを認めつつ、楽しいネタにできたら最高ですね。

また、お酒は飲むものだけにあらず。

様々な話の起点となることも多いお酒を、物語として楽しむのも中々面白いものですよ。

それでは、今回はこのあたりで。次回もまたよしなに。

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風香

2019年商品部入社。
元分子細胞生化学専攻の理系。理系ですが歴史や軍記物の読書が趣味です。本コラムでは歴史や文化、古典に時々科学をまじえながら「食卓の外の日本酒の話」をしたいと思います。

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