日本酒×発酵食品で健康を目指せ!体に嬉しい酵素のはなし
日本酒×発酵食品で健康を目指せ!体に嬉しい酵素のはなし

2019.10.29

日本酒×発酵食品で健康を目指せ!体に嬉しい酵素のはなし

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こんにちは!風香です。

突然ですが、健康食品といえば何を思い浮かべますか?

スーパーフードやら機能性表示食品やら巷では流行っているようですが、日本人としては「和食!」「発酵食品!」と即答していただきたいところ。

何故発酵食品が健康なのかと言うと…鍵は「酵素」にあり!

発酵食品と酵素の力にかかれば、例えば呑兵衛さん憧れの「美味しく健康的に酔う」なんて夢のようなこともアッサリ叶えてくれるんです。

そんなわけで、今回の小話は理系女・風香による「発酵食品と酵素で酒を飲む」科学的解説回です。頑張ってついてきてください。

そもそも酵素とは

酵素(enzyme)は、「生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子」と定義されています。

簡単に言えば「体の中でいろんな反応をおこしてるすごい奴」ってことです。

我々人間の体内には約5000種類もの酵素が存在しているとされており、このそれぞれが体を健康に保つために働いています。もちろん、他の植物、動物、微生物においても同様に様々な酵素が化学反応を起こすことで生命サイクルが循環されています。

この酵素群は大きく「消化酵素」と「代謝酵素」に分類されます。

消化酵素と代謝酵素

消化酵素は食事などで体に取り入れた物質を消化・吸収できるように分解する役割を持ちます。

一方、代謝酵素は消化酵素によって吸収された栄養素を生命活動に必要なエネルギーに変える、体の機能を維持するなどの体内の化学反応全般を担う役割を持ちます。

この二者の酵素が揃うことで初めて人間の体は調子良く動くわけですね。

日本酒で例えると、麹が生産するデンプン分解酵素(アミラーゼ/消化酵素)がデンプン(食事)をグルコース(単糖/栄養素)に分解。

麹

分解されたグルコース(単糖/栄養素)は酵母のピルビン酸カルボキシラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、チマーゼ他複数の酵素(代謝酵素)によって酵母の生命サイクルに用いられ、その副産物としてエタノールが生産されます。

酵母

また酵素には老化を防ぐ、免疫力を高めるなどの効果もあるので、老化の進行を抑えるという役割も併せ持つことになります。

しかし、この大切な酵素、体の中で作られる量が決まっています。加えて齢を重ねるごとにその合成量は減っていきますので、植物や動物、そして微生物で合成される酵素を食事などで外から取り入れることが重要となります。

これが、昨今のアンチエイジングや若返りなどに「酵素を摂取するとよい」と言われる由縁なんです。

食品中に含まれる酵素は消化酵素がメインです。これを食事で補えば、人間の体内は代謝酵素の生産に専念でき、貴重な酵素の上限を有効活用できるのです。

酵素をとるには発酵食品が一番!

日本は世界でも有数の長寿国だというのは皆さんご存知のことと思います。

それはなぜか?

考えられる要因はいくつか存在しますが、それらの一つに和食、特に発酵食品を古来より食べ続けてきた事が挙げられます。

酵素が含まれる食品は多々あります。

フルーツ、生野菜、生魚、肉類…そして、発酵食品です。

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これらの食品には自己消化を促す消化酵素が含まれています。しかし、酵素は熱に弱いので、加熱調理した野菜や魚では十分な効果が得られません。

一方、発酵食品は「加熱調理をしないで食べることが出来る」、「微生物の代謝産物(細かく分解された栄養素)が同時に摂取できる」、「他の食品と合わせても不味くなりにくい」などなど、デメリットを探す方が難しいくらい栄養価が高い食品なんです。

また、微生物が持つ酵素は人間には作れないものも多く存在します。その酵素が分解した代謝物を食べれば、人間には吸収しにくい栄養素も吸収しやすくなっちゃうんです。発酵食品すごすぎ!

日本酒×発酵食品の親和性のはなし

発酵食品日本代表といえば、そう、ご存知日本酒です。

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酒が薬として扱われてきた過去があるように、日本酒にもアミノ酸、ビタミン、ミネラル、有機酸などの栄養素が含まれるほか、血行促進、美容効果など健康にうれしい効果が認められています。(日本酒醸造においても酵素は重要な働きをしますが、火入れの際に失活するので、経口摂取による「健康効果がある酵素」という要因には含まれないものとします)

一方で、飲み過ぎれば胃が荒れやすくなる、腎臓に負担がかかる等のデメリットが存在するのも事実。

そこで、賢い昔の人は「おつまみ」を用いることでこのデメリットを克服しようと考えたのです。

選ばれたのは・・・発酵食品でした。

別段、発酵食品だけをおつまみに選んでいたわけではないのですが、「発酵食品をつまみに酒を飲むと調子がよい」という理由で結構な頻度で酒膳には上がっていたようです。

江戸時代に読まれた川柳にこんなものがあります。

・塩辛が呑ませたように嚊にいひ
・雲丹がまだ残っていると徳利振り
・このわたに罪を負はせたなまこ酒

簡単に訳すと、「塩辛は酒盗だ!飲み過ぎちゃうのもしょうがないよね!」という意味です。

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塩辛は、その塩味や苦味が酒にマッチする食味もさることながら、酒飲みには嬉しい効能も。

肉類、その内臓を原料としている塩辛はタンパク質や消化酵素に加え、アルコールの代謝を促進し腎臓を守る働きをするビタミンB群が豊富に含まれています。

塩辛が生まれたのは奈良時代ごろとされています。しかも、当時から酒の席で出されていたとか。流石は長年酒の相棒を務めている塩辛、年期からして他のおつまみとは箔が違います。

その他にも、から汁、ぬた、ぬか漬け、納豆、へしこ、なれずし、おかず味噌などの発酵食品を酒のお供にしていたとされています。

その多くが消化酵素を多分に含み、また微生物が酵素によって分解した代謝産物などの胃や腸をアルコールから守る栄養素をたくさん保持しています。酒飲みにこそ発酵食品は欠かせない友なのです!

おつまみといえば…ほっけ先輩のコラムですよね。

日本酒によく合う簡単に作れるおつまみがたくさん載っているので、皆さん端から端まで読んでみてください。お腹が空きますよ。

今回私が独断と偏見と栄養学的観点からお勧めしたいのがこちら!

酒粕クリームチーズ

 

チーズは生乳のタンパク質を凝固させ水分を絞って作ります。100 gのチーズを作るのに必要な牛乳は約1000 mL。単純に考えれば10倍の量の量の栄養素が凝縮されています。チーズの栄養素といえばカルシウムが真っ先に浮かびますが、実はビタミンB2も多く含まれています。

またこのレシピのすごいところはチーズを漬けこんでいる酒粕!

酒粕にはタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)やデンプン分解酵素(アミラーゼ)などの100種類以上の酵素が含まれています。多い。

加えて、ビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、葉酸、パントデン酸などのビタミンB群がそこらの野菜の2~10倍程度も含まれているんです。強い。

酒粕クリームチーズは消化を促し、アルコールの代謝を促進し、腎臓を守る鉄壁の布陣であると言えます。

発酵食品最高!

でも、食べ過ぎにはご用心。

日本酒と酵素といえば…健康の他にも、面白い話がまだまだたくさんありますよ!

 

さて、日本の誇るべき食文化「発酵食品と健康」のはなし、いかがだったでしょうか?

栄養学が云々、酵素がどうこうと言うと難しく聞こえるかもしれませんが、要するに温故知新。何で昔から食べられているのかといったら、美味しくて健康にいいからに決まってますよね。

昔の人々に倣って一献。古き良き発酵食品が、皆様の健康と、豊かなお酒の糧になりますように。

それでは、今回はこのあたりで。次回もまたよしなに。

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風香

2019年商品部入社。
元分子細胞生化学専攻の理系。理系ですが歴史や軍記物の読書が趣味です。本コラムでは歴史や文化、古典に時々科学をまじえながら「食卓の外の日本酒の話」をしたいと思います。

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