2020.04.24

祝!酒造りの「蒸」は甑倒しで終盤戦へ!

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こんにちは!まっさんです。

日本酒造りの現場には節目ごとの行事があることをご存知でしょうか?

「神様」「自然」

尊ぶ心を大切にしてきた蔵の習わしは、その年の酒造りを科学では表せないチカラで支えてきました。

その習わしのひとつが「甑倒し(こしきだおし)」

甑(こしき)とは原料米を蒸すために使われる道具で、大きな大きなせいろのようなものです。

甑倒しとはその年の蒸米づくりが終り、甑を片付けることから甑を倒すという表現がされたのでしょう。毎年、甑倒しは各酒蔵の製造スケジュールにより異なりますが、おおよそは暖かくなり始める春先の3月~4月にかけて行われています。

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休みなく働いた甑に感謝を伝え、無事に蒸米づくりを終えたことを皆でお祝いする。

これぞ甑倒しなのです。

引く手あまたの蒸米?

せっかくなので、蒸米づくりについても少しお話ししていきたいと思います。

日本酒造りにおいて「蒸」は原料処理の工程です。

202004まっさんこらむ3_酒造り工程挿入図

とこんな流れで酒造りは行われていくのですが、蒸されたお米のその後は一体どこへいくのでしょう?じつは、行き先はひとつではなく、それぞれの用途によって複数存在するのです。

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ひとつ、酒母へ投入される麹をつくるための蒸米。
ふたつ、醪へ投入される麹をつくるための蒸米。(添、仲、留仕込3回に分けて)
みっつ、酒母へ投入される掛米としての蒸米。
よっつ、醪へ投入される掛米としての蒸米。(添、仲、留仕込3回に分けて)

202004まっさんこらむ5_蒸米の行き先挿入図

このように蒸米は各方面から引っ張りダコさんなのです。昔から酒造りは「一麹、二?、三造り」と言われていますが、この重要な3つの工程の直前に蒸があることから、当然ながら気が抜けない大切な工程なのは紛れもない事実。そして、多くの行き先をもつ蒸米をフル稼働してサポートしているのは「甑」だということも忘れてはいけません。

蒸米は味わいの源流のようなもの。

良い蒸米を願い、それに感謝する。酒蔵が甑を尊ぶ気持ちというのもわかりますね。

蒸米の良し悪しってどんなこと?

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蒸米の善し悪しはズバリ!

弾力性があり適度な水分を含む、米粒同士が粘つかないさばけの良いことが好ましいのです。食感としてはグミやガムのような感じですよ。

理想の蒸上がりは外硬内軟(がいこうないなん)

日本酒好きなら聞いたことがある言葉かもしれませんが、文字通りに米の外側が硬く、内側が柔らかいということが理想なのです。

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蒸米に含まれる水分量は非常に重要なポイント。

まず、良質な麹を造るためにはお米の内部まで麹菌を繁殖させる必要があります。菌は水分を求め菌糸を伸ばすことから、水分量がありすぎては表面ばかりに菌糸が繁殖してしまい中まで菌糸が食い込めないのです。反対に水分量が少ない場合は菌の繁殖力が弱くなるといえます。麹づくりに使用される蒸米水分量は約35~40%が丁度良いのです。

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酒母や醪に使われる掛米においては、水分量が多ければ溶けやすく、少なければ溶けが悪くなり糖化とアルコール発酵のバランスが崩れてしまうのです。

もちろん、洗米~浸漬(米に水を吸わせる)までの工程を経ての水分量となるのですが、最終調整は「蒸」なのです。酒の味わいを左右する重要度の高い工程ということがわかります。

炊くのではなく蒸す

昔から日本酒造りに使用されるお米は蒸すとされています。普段、僕たちが食べるお米は炊いていますよね?炊いたお米が日本酒造りに適していないのはなぜでしょうか。

蒸したお米の水分量は約35%に対して、炊いたお米は水分量約65%

お米が含む水分量から先ほども書いたように「麹づくり」、「糖化と発酵」において蒸米が並行複発酵には優位という点があげられます。それとは別に、蒸米を使う利点があります。

それは100℃以上の蒸気によるお米の高温殺菌です。

日本酒は微生物がつくり出す賜物。悪さをする雑菌を排除し安全にお酒造りをおこなうためには殺菌は必要不可欠なのです。

令和1BY甑倒しは純米酒岩手山

2020年4月4日は菊の司の甑倒し。留仕込の掛米を醪に投入後、今期の蒸米工程は無事終了となりました。熱い蒸気を出す甑の姿は酒造りが始まるまでしばしお休みです。

ところで、甑倒しのお酒って気になりませんか?!日本酒には酒造年度の初めに搾ったお酒のことを初槽(はつふね)と呼びますが、甑倒しのお酒っていうのは聞いたことがありませんよね。酒蔵にとっては縁起の良い〆のお酒ということでご紹介したいと思います。

菊の司の1BY甑倒しのお酒は↓↓↓

202004まっさんこらむ9_商品紹介_岩手山バナー

発売は6月中旬を予定しております。

最後に

現在の日本酒造り現場は、バイオマスによる数値化が進みより安定した酒質を生み出すことが可能となってきました。それでも古来より受け継がれる酒造り技術はもちろんのこと、感謝・尊ぶ・敬う心が「習わし」として今も酒蔵に存在することに日本の伝統の奥深さを感じます。

「和の心をもって、酒造りの心とする。」

日本酒がひとりでも多くの人に飲んでもらえることを期待し〆させていただきます。

ご報告

いつも「きくつかこらむ」をご愛読いただき、ありがとうございます。2018年2月よりスタートさせていただいておりました「まっさんの日本酒かるた」は、自身の退社にあたり第25弾をもって終了させていただくこととなりました。お付き合いくださり、誠にありがとうございました。

それでは、第25弾いきます!

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