【正解発表】菊の司酒造「非公開2020」のスペックを公開します
【正解発表】菊の司酒造「非公開2020」のスペックを公開します

2020.06.6

【正解発表】菊の司酒造「非公開2020」のスペックを公開します

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原料米・精米歩合・酵母・火入れ有無などすべてのスペックが【謎】の日本酒「非公開2020」。

いよいよ利き酒クイズ正解発表です!!みなさんは何問当てることができたでしょうか?

ネタバレしたくない方はまずはこちら。

 

謎の日本酒「非公開」とは?

酒米などのスペックをすべて非公開とし、先入観にとらわれず、お客様自身の感覚でお酒を楽しんでいただきたいというコンセプトで企画したお酒です。またラベルのQRコードを読み取ると利き酒クイズに挑戦できるという、革新的(?)な試みでもあるのです!!

日本酒YouTuberも挑戦してくれています!

今回は200人以上の方々にご回答いただくことができました。本当にありがとうございます!

またお取扱いいただいた酒販店様ならびに飲食店様におかれましては、当商品の趣旨にご賛同いただき、お客様が楽しんでいただけるように多大なるご協力いただきました。重ねて御礼申し上げます。

さて、前置きはここらへんにして早速クイズの正解発表に入っていきましょう!

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正解発表!!

今回、本当にたくさんの人にご参加いただきました。なんと、全問正解した方が2名いらっしゃいます。

Q_secret2020_A1

非公開2020に使われているお米は「亀の尾」です。

この問題で多くの人が不正解となりました。一番多かった回答が「吟ぎんが」です。岩手県の酒米、ということで選んだ人も多いのではないでしょうか。

Q_secret2020_g1

原料米については「甘味」に注目するとある程度絞り込むことができます。

選択肢にある「吟ぎんが」「愛山」は酒蔵的な表現で言うところの「溶けやすい米」、つまり糖化させやすく甘みを引き出しやすい品種です。吟ぎんがについては、年度や刈り取り時期、地域によって差があるものの、多少ミルキー感のあるふっくらとした味わい、少し苦味を感じる酒になりやすく、最近では甘口で香り高い吟醸酒に多く使われています。一方の愛山は四段仕込み(甘味の調整用)の品種として改良されたもので、たんぱく質が非常に少なく、透明感のある上品な甘味が特徴。

今回の「非公開2020」は非常に引き締まった味わいでした。

参加した多くの人から「すっきりしている」「水みたい」「物足りなさを感じる」などの感想を寄せられています。当蔵としては思惑通りで、甘味で勝負する酒ではなく、飲むごとにほどけていくような奥深い味わいを表現しました。

亀の尾は現在出回っている多くの品種の祖先にあたるお米です。

100年以上前に山形県のある農家が偶然発見した在来品種、つまり品種改良がされていないものです。大粒でしなやかさを持ち、捌けがよく、なによりその野性味を含む幅のある味わいにファンも多く、当社では契約栽培によって20年前から取り組んでいる品種です。

基本的に「溶けにくい米」なので、甘味が重すぎることもなく、その代わり米由来の自然なアミノ酸や風味が味わいの骨格となります。そのため、今回表現したかったお酒にぴったりでした。

Q_secret2020_A2

精米歩合は「55%」まで磨いています。

これについては半分以上の人が正解していました。値段的な推察もあったのではないでしょうか。

Q_secret2020_g2

また、特定名称について、

Q_secret2020_A3

正解は「純米吟醸酒」でしたが、こちらも多くの人が正解していました。

Q_secret2020_g3

おさらいすると日本酒の特定名称は、

精米歩合60%以下→(純米)吟醸酒

精米歩合50%以下→(純米)大吟醸酒

と表示することができます。米と米麹だけで造られたお酒は精米歩合に関わらず「純米」と付けることができます。

今の日本酒市場では当蔵も例外ではなく「精米歩合55%の純米酒」や「精米歩合50%の純米吟醸酒」もよく目にします(ややこしい!)。つまり、特定名称の格付けは酒蔵次第ということです。「非公開2020」はひっかけは無く、「精米歩合55%の純米吟醸酒」でした。

ちなみにラベルの表示を見ていただければ、「醸造アルコール」が入っていないため純米系統であることが分かるかと思います。

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非公開2020に使われている酵母は「ジョバンニの調べ」です。

これはハッキリ言って難問です。

Q_secret2020_g4

やはり、岩手酵母系に回答が集まる結果となりました。

「カプロン酸エチル高生産酵母」を使用しているヒントを公開しておりました。この選択肢の中で当てはまるのが「K1801(きょうかい18号)」「ジョバンニの調べ(岩手酵母)」です。

カプロン酸エチルとはメロンやリンゴ、イチゴなどに喩えられる果実香の成分。

この芳香が人気なのに加えて、各種鑑評会やコンテストなどでも非常に重要視される香気成分のひとつです。そのため、各都道府県オリジナルのカプロン酸エチル高生産酵母の開発が展開し、非常にたくさんの酵母が全国各地の酒蔵で使われています。

さらに、カプロン酸エチルの「強さ」に着目すると一般的に「K1801>ジョバンニの調べ」です。また、ジョバンニの調べは日々改良研究されており、今使用されている酵母は前世代に比べて発酵力が強く、またセメダイン様(ホワイトボードマーカーやボンドなどに似たニオイです)の香りが出にくい性質があります。

当蔵では「甘め華やかフルーティ」には「K1801」を、「すっきりキレイフルーティ」には「ジョバンニの調べ」を使用しています。

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非公開2020は「火入れ酒」です。

Q_secret2020_g5

これも多くの人が正解していました。「要冷蔵」の表記がなかったこと、お酒が常温で売られていた(届いた)こともヒントになっていたかもしれません。

しかし28%の「生酒」の回答、実は当社にとっては嬉しい間違いです。

ヒントにも書いた通り、生酒は酒質が変化しやすいデリケートな商品ですがフレッシュな味わいを楽しむのにぴったりなお酒です。当社では搾りたてのお酒の味わいをなるべくそのままお楽しみいただくため、普通酒以外は最長で5日以内の火入れやビン詰めを徹底しております。また炭素ろ過による酒質矯正をせず、搾り後の加水も最小限にしているため、透明感のある味わいを火入れ酒で感じていただけたのであれば嬉しく思います。

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非公開2020の日本酒度は「-1」です。

さて、2020より追加された超難問、日本酒度。

Q_secret2020_g6

日本酒度とは、お酒の比重(水と比べた重さ)を表しており、おおよその甘辛の目安として、発酵管理に用いられている数値です。

コーヒーに砂糖が「溶ける」ように、糖分などのエキス分が多い酒は比重が重くなり、日本酒度で言うと「マイナス」になります。逆に、日本酒のアルコール分であるエタノールは水よりもかなり軽いため、エキス分が少なければ比重が軽くなり、日本酒度でいうと「プラス」になるのです。

あらためて選択肢を見てみると、「-10以下(超甘口)」「-9から-3(甘口)」「-2から+3(中口)」「+4以上(辛口)」というような選択になっております。厳密には、この振り分けでは区別できないほど、酒造りにおいては日本酒度「1」の差を大切に発酵管理をしていますが、おおよその味わいの振り分けとして選択肢を設定しました。

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非公開2020の酸度は「1.6」です。

こちらも今年から追加された超難問です。

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酸度とは、日本酒にアルカリ性溶液を滴下し中和するまでに必要な試液の量を表した数値です。

日本酒にはリンゴ酸やコハク酸、乳酸に代表されるたくさんの有機酸がふくまれており、それらは香りや味わいに大きく影響しています。酸、というと「すっぱい」のではと思いがちですが味の感じ方はさまざまで、たとえばコハク酸のように「旨み」のように感じる成分もあります。これは鰹節の「イノシン酸」や昆布の「グルタミン酸」などをイメージしていただければ分かりやすいかと思います。

これらの酸を生産するのが、酵母をはじめとする微生物です。

ざっくりとイメージすると、微生物がたくさん活動すれば酸が出やすく、酒造りにおいてはもろみ中の栄養成分や発酵温度を管理することでコントロールしています。

選択肢を見てみましょう。

酸度が1.0以下のお酒というのは非常に珍しく、同時に高度な技術によって造られています。主に大吟醸酒で見かける数値です。

逆に2.0以上のお酒ははっきりと酸を感じます。この場合、多くのお酒で「酸っぱさ」を伴っていますので分かりやすいかと思います。

では酸度1.0台の前半と後半の違いについてです。結論から言うと、「甘味以外の味の量(幅)」です。

当社のお酒造りの場合を例に説明します。

たとえば同じ酵母と米を使用したとしても、酸度のコントロールは可能です。その際に一番影響するのが、発酵(仕込)温度です。

仕込みの温度と発酵温度を低くすると酵母の動きは弱くなりますので、比較的酸は低くなる傾向にあります。発酵自体も緩慢になるので、その間に米を適度に糖化させながら、バランスを保ってゆっくりと発酵させていくのです。いわゆる、昔から吟醸づくりと呼ばれる低温発酵です。

ではなぜ、純米吟醸の「非公開2020」は酸度が高めなのか。

原料米に注目します。亀の尾は前述したように「溶けにくい」お米です。この性質が鍵。

溶けにくいお米を溶かさないまま発酵させると、想像する通り、味のない酒になります。米なりに溶かさなければならないのですが、そのためにはある程度の発酵温度が必要です。非常に込み入った話になりますので割愛しますが、発酵温度によって米の溶け方(糖化具合)も変わってくるのです。また、糖化によるブレーキがない状態は酵母にとっては活動しやすい環境になるため、発酵が進みやすく、酸がでやすい、ということになります。

まとめると

非公開2020はこんなお酒です。

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「非公開」で伝えたかったこと

菊の司酒造「非公開」はあえてスペックを一切公開しないまま「利き酒を楽しむ商品」として企画し、発売しました。

その結果、たくさんの方に日本酒を自分の感覚で楽しんでいただくことが実現し、たくさんのお客さまのお声をいただくことができました。蔵人一同、本当に嬉しく思います。

日本酒を「情報で嗜む」のではなく「感覚で楽しむ」おもしろさに気付く、そんなちょっとしたきっかけになれば幸いです。

  

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【正解発表】菊の司酒造「非公開2020」のスペックを公開します
菊の司酒造|kikunotsukasa

酒造創業1772年、岩手県盛岡市に蔵を構える県内最古の酒蔵です。

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