
2020.02.7
こんにちは!風香です。
正月があっという間に過ぎ去り、もう2月です。皆様いかがお過ごしでしょうか。
光陰矢の如しとはよく言ったもので、気がつけば入社からもう10カ月以上たってるんですよね。驚きです。
ところで、入社当初から試飲会などお客様とお話する機会に立つと「女の子なのに酒蔵に勤めてるの?」やら「女の子なのにお酒つくれるの?」と尋ねられることが多々あります。最近では女性杜氏や女性蔵人も増え、酒蔵で女性が働くことも普通の事であると思っていたのですが、まだまだ「酒蔵=男社会」という認知は根深い様子。
今回の風香の小話は、化学をちょっとお休みして酒蔵で働く女性について迫りたいと思います。
そもそも、なぜ酒蔵=女人禁制という印象が広まったのでしょうか?
「君の名は」で一時期ブームになった「口かみの酒」のように、昔のお酒造りは神事に関わる女性を主体に行われていました。
「口かみの酒」について、詳しくはこちらをチェック!
また、酒造りの最高責任者を示す言葉に「杜氏」というものがあります。
「杜氏」という言葉の語源は「刀自」、神道における女性の位を現す霊号です。この女性の位を現す「刀自」は段々と村長や組合長など集団のリーダーを現す言葉となり、酒蔵においては読みをそのままに「杜氏」という形になりました。
杜氏について、詳しくはこちらをチェック!
これらのことから鑑みるに、酒造りは元々女性の領分だったんですね。
現代の多くの人に根付く「酒造り=男社会」という様式が本格的に台頭したのは、おおよそ江戸の頃だといわれています。
この頃になるとお酒はハレの日や祭り事だけでなく、晩酌など常習的に飲む習慣が庶民に広まりました。お酒の需要拡大により製造量が増え、お米や水など重たいものをたくさん運ぶ等の力が必要且つ危険な作業が多くなったため、男性が酒造りの主力になっていったことが考えられます。
もう一つ、江戸時代に爆発的に庶民に広まったものがあります。それは「ぬか漬け」!
白米の普及により玄米の消費量が減った江戸では、ビタミンB1不足による脚気(かっけ)が深刻な流行り病でした。手軽にビタミンB1を摂取できるぬか漬けは脚気対策として爆発的な人気を誇りました。
そのため、何処の家にもそれぞれぬか床が存在し、家庭の食を担う奥方は毎日ぬか床をかき混ぜていました。ぬか床には当然ながら多くの乳酸菌が存在します。江戸の蔵人はこの乳酸菌が酒造りに悪影響を与えると考え、「ぬか床を触る女性は酒蔵に入らないように」と線引きを行ったそうな。
また、仏教による“血の穢れ”という俗世間の不浄観が根強く残っていた時代ですから、男女間の不浄行為を禁止する意味でも女人禁制社会が形成されていったのかもしれません。
時は現代、当社にも酒を造る頼もしい女性スタッフがおります。
酒蔵ので女性が働けるの?という疑問が生まれる際たる理由は、「酒蔵の肉体労働が女性に務まるのか」という点だと思います。
それでは、その疑問にお答えしましょう。
A. 追ってついてくる筋肉がどうにかしてくれます
もちろん、我々新入社員も入社当初は一升瓶が8本入ったケース(通称8P)を持ちあげるだけで筋肉痛にむせび泣いていました。
しかし粕詰やお酒の運搬、機材の移動等の日々の業務の積み重ねが、冬の造りに耐えうるだけの筋肉を育てたのです。主に肩周りとか。
ベテランにもなるとこんな感じになります。
これを全部捌いた後でも軽快に走り出すので驚きです。先輩、私まだまだ精進しますね!
もちろん、重すぎるものは複数人の共同作業でこなします。
自分の伸長を超える場所に重いものを持ちあげるときや、タンクなど大きく重いものを動かす時は殿方に助けを呼びます。無理は禁物。
なお、この時撮影者の靴は水没しました。
女性が酒造りに加わったことにより生まれたメリットもあります。
例えば、蔵人同士のコミュニケーションがよりスムーズに行われ、作業が円滑に進むようになったこと。
忙しい造りの時期になると、あるいは男性だけでの作業が習慣化すると、どうしてもキツイ言葉遣いが目立ってきます。時にはそんな言葉遣いが無益な衝突を生むことも…
そこに女性蔵人が加わったことでベテランたちの言葉遣いも恒常的にマイルドになり、無為な衝突が減り作業が円滑に進むようになった、と感じる職員も多くいるようです。
また、女性の細やかな視点は蔵内の整理整頓や衛生面の向上にも一役買っています。
そして、忘れてはいけないのがこの「きくつかこらむ」の記事作りです。
我々のコラムは毎週ミーティングを行い、メンバー全員で意見を出し合いながら作成しています。
今回は、メディアチーム女性陣のコラムをちょこっと紹介!(男性陣の紹介はまた後日…)
甘いものと日本酒の組み合わせが学べるさおりんさんのコラムは、なんといっても読んだその日に「帰りに買って試そう」の手軽さが魅力的。日本酒って何となく苦手、そう思ってるそこの貴方!騙されたと思って日本酒とコンビニスイーツを買ってから帰宅してください。
こらむの筆者、さおりんさんは涼しい顔して鬼のようなスピードで仕事をこなすスーパーウーマン!いつも蔵の中を風のように動き回り、彼女が通った後に仕事はなく、随時移動してるので探す時に結構苦労します。
ほっけ先輩のコラムはパパッと作れるおつまみレシピがたくさん!どこがホットケーキしかつくらない、なんでしょうか?良い意味でタイトル詐欺なコラムです。当方も晩御飯のおかずに困ったときにお世話になってます。
こらむ筆者のほっけ先輩は、どんな仕事もこなすハ○ーキティみたいな方。夏は鋸とドリルを担いで大工仕事をしていたり、冬は麹にもろみに粕詰め…あちらこちらに引っ張りだこ。先日、専務に「お前もほっけみたいになるんだよ!」と言われた時は思はず「無理!」と即答してしまったほど…すごい御人です。
同期の桃子さんが書く、ナウいヤングのハートを射止める「日本酒の美」を厳選したコラムです。デザインの話に始まり、最近は日本酒を使ったカクテルの紹介も行っています。インスタ映え狙ってる方必見です!
桃子さんは真面目なのにお茶目で、蔵の皆を和やかにしてくれる素敵なレディです。私のボケ(別にボケているわけではない)を全部回収してくれる優しさも兼ね備えています。入社1年目で麹室を任される期待のルーキー、今後の活躍にもご注目ください。
ところでこのTシャツ、素敵でしょう?私が買わせました。イベントなんかで見れたらきっといいことがあります。
実は当コラムの筆者、風香も女性蔵人だったんです。本コラムでは歴史や文化、古典に時々科学をまじえながら「食卓の外の日本酒の話」をしています。いつも読んでくださりありがとうございます。
同期という事もあってか、よく桃子さんと間違えられますが、眼鏡のほうが私です。素敵なTシャツを着てる場合も大体私です。どうぞよしなに。
材木町商店街のよ市や蔵開き、試飲販売会などなど、菊の司の女性蔵人は蔵の外でも活躍中!
見かけた際には是非お声がけを!
個性豊かな彼女たちが、お酒をもっとおいしくしてくれること間違いなしです!
さて、酒蔵で働く女性のはなし、いかがでしたでしょうか?
男手のみで酒を醸していたのは今は昔。造りも雇用も多様化した現代、ぜひお酒そのものだけでなく、それを造っている人にも注目してみてください。
それでは、今回はこのあたりで。次回もまたよしなに。