2021.06.4

【正解発表】菊の司酒造「非公開2021」のスペックを公開します

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原料米・精米歩合・酵母・火入れ有無などすべてのスペックが【謎】の日本酒「非公開2021」。

いよいよ利き酒クイズの正解発表です!!みなさんは何問当てることができたでしょうか?

 

謎の日本酒「非公開」とは?

酒米などのスペックをすべて非公開とし、先入観にとらわれず、お客様自身の感覚でお酒を楽しんでいただきたいというコンセプトで企画したお酒です。またラベルのQRコードを読み取ると利き酒クイズに挑戦できるという、革新的(?)な試みでもあるのです!!

「非公開」3年目の今年は900人以上の方々に挑戦していただきました。本当にありがとうございます!

またお取扱いいただいた酒販店様ならびに飲食店様におかれましては、当商品の趣旨にご賛同いただき、お客様が楽しんでいただけるように多大なるご協力いただきました。重ねて御礼申し上げます。

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正解発表!!

今回、本当にたくさんの人にご参加いただきました。なんと、全問正解した方が9名いらっしゃいます。

 

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非公開2021の特定名称は「本醸造」です。

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この問題はラベルの原材料名をよく見ると、実質2択で考えることができます。

原材料名に記載されている「醸造アルコール」は、搾る直前のもろみに添加する、いわば焼酎のようなアルコールです。アルコール添加(通称アル添)はエキス分を低くしてキレの良い味わいに仕上げたり香りを引き立たせるために行う、意外と歴史の古い伝統的な技術です。これを行わないものは特定名称は「純米」と表記することができます。

さて、非公開2021のラベルを見てみると醸造アルコールの記載があります。ということは純米ではないため「大吟醸」か「本醸造」の2択になります。

 

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そして精米歩合は「70」です。

 

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ここで多くの方が不正解となってしまいました。中には価格から推測した方も多いのでは??

「精米歩合50%大吟醸」「精米歩合60%本醸造」の回答が多く寄せられました。

多くの日本酒造りの場合、使用するお米の外側を磨き落とす精米という工程があります。実際に使用する白米の玄米に対する重量比を精米歩合(せいまいぶあい)といい、精米歩合70%とは玄米の30%を磨き落とした白米を意味しています。

米の外側にはタンパク質や脂質が多く含まれています。

それらは食味には良く旨味や米のツヤとして必要なものですが、酒造りにおいては雑味の原因になります。そのため、米の外側を削り、内側のデンプン質が純粋な部分を酒造りに使っているわけです。

今回の非公開2021の場合は、米の旨味を程よく残しつつ、爽やかな後味を発酵とアルコール添加でバランスをとった酒質設計になっています。

 

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非公開2021に使われている酵母は「ジョバンニの調べ×K901」です。

毎年のことながら、酵母の問題はハッキリ言って超難問です。しかも今回はブレンド酵母でした。

 

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岩手酵母系に回答が集まる結果となりました。

大きく分けると「K1801(きょうかい18号)」と「ジョバンニの調べ」はカプロン酸エチルといってメロンやリンゴ、イチゴなどに喩えられる果実香の成分を多く生成する酵母、「K701」と「ゆうこの想い」は酢酸イソアミルというバナナや洋ナシなどに喩えられる香り成分をつくります。

特にカプロン酸エチルは人気で、現在の各種鑑評会やコンテストなどでも非常に重要視される香気成分のひとつです。そのため、各都道府県オリジナルのカプロン酸エチル高生産酵母の開発が展開し、非常にたくさんの酵母が全国各地の酒蔵で使われています。

 

今回の非公開も華やかさを表現するために岩手県オリジナルの「ジョバンニの調べ」を使用しています。「K901」は発酵力が強くタフなので「ジョバンニの調べ」の補助として、また香りのニュアンス付けのために2種の酵母をブレンドして醸しました。

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非公開2021は「火入れ酒」です。

 

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これも多くの人が正解していました。「要冷蔵」の表記がなかったこと、お酒が常温で売られていた(届いた)こともヒントになっていたかもしれません。

しかし23%の「生酒」の回答、実は当社にとっては嬉しい間違いです。

ヒントにも書いた通り、生酒は酒質が変化しやすいデリケートな商品ですがフレッシュな味わいを楽しむのにぴったりなお酒です。菊の司酒造では搾りたてのお酒の味わいをなるべくそのままお楽しみいただくため、すべてのお酒を最長で5日以内にビン詰めしております。また炭素ろ過による酒質矯正をせず、搾り後の加水も最小限にしているため、しぼりたて直後の原酒がもっている味わいを火入れ酒で感じていただけたのであれば嬉しく思います。

 

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非公開2021の醸造年度(BY)は「2020年度」です。

 

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日本酒の醸造年度(Brewery Year)は、一般的には7月から6月の1年間です。非公開2021のお酒は2020年末に仕込み、年明けに瓶詰めをしたお酒なので2020年度のお酒です。

ちなみに、ラベルに表示してある製造年月をヒントにした方も多いはず。日本酒の製造年月はとてもややこしく、こちらで書き出すと長くなりますので気になる方は下記のこらむを参照してみてください。

 

 

 

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非公開2021は「日本酒度+5 酸度1.3」です。

 

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日本酒度とは、お酒の比重(水と比べた重さ)を表しており、おおよその甘辛の目安として、発酵管理に用いられている数値です。

コーヒーに砂糖が「溶ける」ように、糖分などのエキス分が多い酒は比重が重くなり、日本酒度で言うと「マイナス」になります。逆に、日本酒のアルコール分であるエタノールは水よりもかなり軽いため、エキス分が少なければ比重が軽くなり、日本酒度でいうと「プラス」になるのです。あらためて選択肢を見てみると、「-5(甘口)」「+5(辛口)」というような選択になっております。

酸度とは、日本酒にアルカリ性溶液を滴下し中和するまでに必要な試液の量を表した数値です。

日本酒にはリンゴ酸やコハク酸、乳酸に代表されるたくさんの有機酸がふくまれており、それらは香りや味わいに大きく影響しています。酸、というと「すっぱい」のではと思いがちですが味の感じ方はさまざまで、たとえばコハク酸のように「旨み」のように感じる成分もあります。これは鰹節の「イノシン酸」や昆布の「グルタミン酸」などをイメージしていただければ分かりやすいかと思います。

これらの酸を生産するのが、酵母をはじめとする微生物です。

ざっくりとイメージすると、微生物がたくさん活動すれば酸が出やすく、酒造りにおいてはもろみ中の栄養成分や発酵温度を管理することでコントロールしています。

酸度が1.0以下のお酒というのは非常に珍しく、同時に高度な技術によって造られています。主に大吟醸酒で見かける数値です。逆に2.0以上のお酒ははっきりと酸を感じます。この場合、多くのお酒で「酸っぱさ」を伴っていますので分かりやすいかと思います。

今回の非公開2021の味わいは「すっきりとしていて(甘くなく)、酸味の少ない味わい」だったのではないでしょうか。

 

まとめると

非公開2021はこんなお酒です。

 

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このお酒にもっともスペックが近いお酒は菊の司酒造の定番商品「菊の司 和の酒」です。

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2020年度より本醸造化し、全量無濾過ビン貯蔵で岩手県内を中心にご愛飲いただいているこのお酒。従来のタンク貯蔵普通酒に比べ香り・味わいともに非常にクリアで普段の晩酌のオトモとして幅広いお料理に合わせてお楽しみいただくことができます。冷酒で華やかに、燗でキリリとした辛口。一升瓶(1800ml)で1870円(税込)です。

菊の司酒造ではアプローチの違いこそあるものの、商品のグレードによって酒造りの工程を差別していません。この和の酒に使うお米も、大吟醸に使うお米も同じように丁寧に洗い、麹をつくり、低温で発酵させ、搾った後もコンディションを崩さないようにすぐにビン詰めをして冷蔵貯蔵しています。それは、菊の司酒造のお酒をお飲みいただくすべてのお客さまに喜んでいただきたいからです。ぜひ、引き続き菊の司酒造のお酒をご愛飲いただければ、蔵人一同幸いです。

「非公開」で伝えたい、日本酒の楽しさ

菊の司酒造「非公開」はあえてスペックを一切公開しないまま「利き酒を楽しむ商品」として企画し、発売しました。

その結果、たくさんの方に日本酒を自分の感覚で楽しんでいただくことが実現し、たくさんのお客さまのお声をいただくことができました。蔵人一同、本当に嬉しく思います。

日本酒を「情報で嗜む」のではなく「感覚で楽しむ」おもしろさに気付く、そんなちょっとしたきっかけになれば幸いです。

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