偶然が生み出した奇跡?もう一つの酒のルーツ「猿酒」のはなし
偶然が生み出した奇跡?もう一つの酒のルーツ「猿酒」のはなし

2020.07.17

偶然が生み出した奇跡?もう一つの酒のルーツ「猿酒」のはなし

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こんにちは!風香です。

突然ですが皆さん「猿酒」って知ってますか?

私がこの言葉を知ったのはまだ純粋無垢だった幼少期のころ。幼いながらに「お猿さん専用のお酒があるのかな」などとぼんやり想像していたものです。最近になってふと思い出したのでちゃんと調べてみることにしました。

○○酒というと、梅酒、蜂酒、ハブ酒みたいに○○に該当する物体がそのまま漬かってることが多い…じゃあ猿酒には猿が浸かってる?!

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そんなことはありません。

じゃあどんなお酒なんでしょうか?

猿酒はどんな酒?

猿酒とは、果実などが岩のくぼみや樹木のうろに溜まり、自然にアルコール発酵した「野生酒」のこと。猿は浸かってません。

山には猿が住んでいることもありますから、文字通り猿が作った酒なのです…と言いたいところなんですが、一概にそうとは言い切れません。

要は酒のルーツみたいなものです。

酒のルーツといえば、その昔ぼんちゃん先輩によって解説されていました「蜂蜜酒」ですよね。

 

この「蜂蜜酒」と同様に、お酒のルーツとされているものが猿酒だというのです。

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ここで、前回のふうかのこらむ「仕組みが分かればもっと面白い!清酒酵母と機能性のはなし」の内容を少しおさらいしましょう。

アルコール発酵には「アルコール発酵をする酵母」「栄養源」「酵母が増殖・発酵するのに適した環境」などが必要です。

アルコール発酵 酵母 酵素反応

逆に言えば、これさえそろっていれば樽や桶、大層な醸造施設なんかが無くても酒はできるってことです。

酵母はもともと植物、動物、真水や海水など自然界に多く生息している生きもの。実は、下手に管理されてる建物の中より野性味あふれる山の中とかのほうがアルコールそのものは生産しやすい…のかも。

さて、話を猿酒に戻しましょう。

山で猿が食べ残して出来上がった、あるいは意図的に木のうろにためて造った酒だから、猿酒。

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偶発的に出来上がった猿酒ですが、県南の方では、野猿が満月の日によく熟れた野イチゴや野ブドウを木のウロに詰め込み、もう一度満月が昇るころにそれを啜っていたという逸話が残っています。山仕事を生業とする人たちがたまたまそれを発見し、盗み飲みをしていたそうな。少しだけなら猿も黙認してくれるが、残さず飲み切ってしまうと猿も怒り、逆に人間の酒を盗みに来るとか…食べ物の恨みは恐ろしいですね。

さらにさらに…「猿酒」は隠語として山で密造した酒や隠した酒のことを指す場合もあるそうな。猿、とんだ冤罪です。

アフリカなどでは酒化した果実を食べたゾウやイノシシが暴れたなんて話もありますし、アルコールの高揚感が癖になって酒を造る猿が居たとしてもおかしい話ではないでしょう。

酵母の性質上、こんな感じの発酵食品の成り立ちは全国、果ては世界中に存在します。

発酵食品は偶然の積み重ねで生まれた!

発酵食品

例えば泡盛の祖となる「すずめ酒」は、雀が大岩のくぼみに隠した粟の穂に雨水がたまり、発酵したものである。といわれています。

また納豆は稲藁をしいた屋内に煮豆を放置したらできちゃったもの、ヨーグルトは飲み残したヤギの乳が空気中や革袋内の酵母で発酵しちゃったもの…という話も結構有名ですよね。

こうして偶然できちゃった発酵食品が、メカニズムもよくわからないまま「なんか食べれる、美味しい、若干保存できそうな気がする」とふわっとした理由で現代まで残っている。これって結構すごいと思いませんか?

余談 フィクションにおける「酒」のイメージ

此処からは完全なる蛇足となります。皆さん、小説やゲーム、漫画やドラマなどの創作物に「酒」というアイテムが出てきた時どんな印象を持ちますか?なんだか特別な演出、大事なキーアイテム…そんな風な描写だと思う事が多いんじゃないでしょうか。

今日ご紹介するクトゥルー掲載、オーガスト・ダーレス著「永劫の探索」シリーズ第一作「アンドルー・フェランの手記」というコズミックホラー小説には重要なアイテムとして冒頭に紹介した「蜂蜜酒」が登場します。

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写真はAmazonより。

貧乏な主人公アンドルーは、偏屈な老人・シュリュズベリイ博士の元で研究を手伝う仕事を始めます。その仕事は珍妙な来客との会話の盗聴や古文書の解析など。奇妙な仕事が多いものの、アンドルーは誠実にこなし博士の信頼を獲得していきます。

そしてある日、博士はアンドルーに「金色に輝く蜂蜜酒」を飲むように勧めました。不思議に思いながらもそれを口にするアンドルー。以降アンドルーは不可思議な夢を見るようになります。

この蜂蜜酒、物語全体を通して大切な役割を持つのですが…飲むと感覚が鋭くなったり、テレパシーが使えるようになったり、宇宙空間で生きられるようになったりと驚きの効果を発揮します。ドラッグみたいですね。

衝撃のラストは皆さん自身でご確認ください。

古来より、人知を超えた現象が起きたり神様が関わったりするときは大抵お酒が絡んでる場合が多いです。

それは「昔は発酵のメカニズムが分からず、神や霊的なものが酒を造っていると思われていた」事や「酒を飲んで酔う=一種のトランス状態になる」事などから、超常的なものが連想されるという時代背景があったからです。

詳しくはこちらをチェック。

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目に見えない力で、よくわからないけど偶然できちゃった発酵食品。

なかでも人を酔わせる酒は色んな逸話がついてまわるほど、昔の人にとっては特殊な存在だったのかもしれません。

お酒を飲むときは、ぜひ浪漫あふれる物語の存在にも目を向けてみてください。お酒に対する価値観がちょびっと変わるかもしれませんよ!

それでは、今回はこのあたりで。次回もまたよしなに。

  

  

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偶然が生み出した奇跡?もう一つの酒のルーツ「猿酒」のはなし
風香

2019年商品部入社。
元分子細胞生化学専攻の理系。理系ですが歴史や軍記物の読書が趣味です。本コラムでは歴史や文化、古典に時々科学をまじえながら「食卓の外の日本酒の話」をしたいと思います。

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