2020.03.17
こんにちは!
近年グローバル化が進む僕たち日本人の食生活。
和・洋・中に加え、エスニック料理までもが気軽に楽しめることから、日本酒と料理のペアリングに大きな可能性が広がっているのはご存知でしょうか?
「すし×ワイン」、「ステーキ×日本酒」というように昔からは想像できなかった組み合わせが定着し、意外性にとぶマッチングが現在進行形で誕生しています。
食とお酒の異文化交流はすでに珍しいものではなくなっているのです。
それに伴い、お酒の嗜み方も「こうでなければならない」というような固定概念的な壁が崩れはじめ、よりオープンなスタンスでお酒と向き合えるようになりました。その代表的なものといえば、
ワイングラスで日本酒です。
みなさんもワイングラスで日本酒を飲んだことは1度や2度あると思います。
ふと思うのですが、ワイングラスを使うメリットって一体何でしょうか?
優雅でオシャレな雰囲気に包まれる。青二才の僕はそんな感じのことしか思いつきませんでした。そう視覚的にしかみていなかったのです。
ズバリ言うと、ワイングラスのメリットは機能性。
本日は国境を越えてまで誕生した「ワイングラスで日本酒」をテーマにワイングラスの機能性に触れてみたいと思います。
和食はひとまず置いといて、日本酒が海を渡りヨーロッパやアメリカなど世界で楽しまれているのは皆様もご存じのことでしょう。しかし、渡ったのは日本酒の中身だけで日本の酒器を交えた飲み方は残念ながら多くは浸透していないのです。
なぜでしょうか?
日本の伝統的な漆器や陶磁器の酒器があるのだから、セットでジャパニーズ文化を楽しんでもおかしくはないはずです。お燗酒のようにお酒を温めて飲む習慣がなかったからでしょうか?はたまたドレスコードならぬその場のシチュエーションに合わなかったのでしょうか?
確かにフランス料理にぐい呑みは微妙な光景ではありますが、江戸切子や和ガラスであればギリ馴染む気はしないでも…
なんて色々と考えてみましたが、海外でワイングラスが選ばれる理由とは香りをはじめとする官能的な部分に触れることを前提にしているからでしょう。
ワインとは原料のブドウ由来の香りや酸味、苦味を楽しむものです。こういった部分にフォーカスして嗜めるのがワイングラスの特徴。それは日本酒においても互換性が見いだされ、香り・味わい・艶・色合い、粘度や口当たりといった官能的な表情を飲み手へ伝えてくれるからにあります。
そう、海外の人々がワイングラスをチョイスすることは必然なことだったのです。もちろん華やかな酒質が好まれた背景を踏まえてですが、それはワインと日本酒に共通する何かがあるということなのです。
ワインはブドウの品種や産地によって香りや味わいはさまざまですよね。さらにワインは熟成具合まで加わります。そのため、それぞれの個性をより引き出すために設計された様々なカタチのワイングラスが用いられます。
では日本酒の個性はどう引き出すのでしょうか?大吟醸や純米酒、原料米や製造工程の違いなど、たくさんの判断材料が存在します。
そもそも日本酒をワイングラスで嗜むようになったのは日本の長い歴史からみてもつい最近のこと。関連の記事をみていてもワイングラスで日本酒の経験が浅い僕には想像しにくいこともあり、実際にやってみることにしました。
「おや…」と思ったら実験する。楽しむコツはこれに限りますよね(笑)
本日は盛岡市にお店を構える、glassto(グラスト)さんにお力をお借りしました。日本酒やワインの個性をグラスによって楽しませてくれる心強いお店です。
今回は「平井六右衛門 心星」と「辛口純米 七福神」で楽しんでみましょう。
飲み比べに使用する酒器は、左からぽってりとしたワイングラス、チューリップ型のワイングラス、飲み口が厚めのぐい呑み、そしてスタンダードな平盃の4種類でございます。参考までに、グラストさんにはこれらの酒器は全てお揃いです。自作の酒器飲み比べカルテに記入しながら実践スタート!
まずはライトなお酒からテイスティングしていきます。ということで、平井六右衛門 心星からいってみましょう!
岩手県の酒造好適米「ぎんおとめ」で醸した低アルコール(14度)原酒です。穏やかな米味香る、心地よい甘酸っぱさが特徴の心星は酒器によってどのような表情をみせたのでしょうか?
ちなみに試飲順はアドバイスを頂いて、平盃→ぐい呑み→チューリップ型ワイングラス→ぽってりワイングラスにしました。(画像のフルートグラスは番外)この時の液体温度は8℃です。
結果はこのような感じに↓↓↓
特に目立った点は、ワイングラスで試飲した際のスケール感のある「上立ち香」です。
2種類のワイングラスはぽってりとしたカタチから香りが中に留まり、お酒を口に含む瞬間まで残すことができるからでしょうか。平盃については、飲み口が広く開放的ななることから上立ち香は飛んでしまい、かすかに感じる程度です。良くも悪くも香りが引き出されるのは、ぐい呑みや平盃よりもワイングラスでした。
また、甘みや酸味が色濃くでたのはチューリップ型のワイングラスで、飲み口が外側に向けて湾曲している形状から、飲んだ時の液体の流れが舌先から舌全体にじんわりと広がり、心星が持つ5味をバランスよく感じることができました。結果、平井六右衛門 心星の特徴を楽しむには、チューリップ型のワイングラスが合っているのかもしれません。
次に、県産飯米で醸した米味たっぷりの辛口純米 七福神をテイスティングしてみましょう。和酒器が似合いそうなそのしっかりとした酒質はワイングラスによってどう変化するのでしょうか?
結果はこのようになりました↓↓↓
劇的な変化がみられたのは、やはり和酒器とワイングラスでの香りの立ち方です。おとなしい吟醸香がワイングラスになるとボリュームが増え、米、乳酸系の香りと相まって立体感が登場。
しかし、グラスの形状からなのか、口に含むと甘と酸より苦味が強調され全体のバランスが崩れたような感じに…。
そこで、上記の写真にあるピッコログラスというラグビーボール型をお薦めしていただいたところ、香りはそのままに気になっていた苦味が薄れていったのです。グラスのカタチを変えるだけで香り、味わいのバランスが調和され、辛口純米・七福神がより楽しめるという結果になりました。
同じお酒とは思えないこのバラつきに唖然しながらも感動。
あるはずのものが感じなかったり、さらには強調されたりと酒器のカタチが違うだけで味わいを感じる順序に変化でるのは驚きです。過去に飲んできたお酒をこんな感じで楽しんでいたら…なんて後悔の念に駆られたほどでした。検証レポートは本当に良い経験となりました。ご協力ありがとうございました!
“☆glassto(グラスト)さんの店舗情報はこちら↓
住所 / 岩手県盛岡市神明町5-20
TEL / 019-601-5966
営業時間 /17:00~24:00 (L.O23:00) 月~土
/12:00~ 土
定休日 / 日曜日、祝日休み
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますのでご来店前にご連絡ください。”
日本酒を飲むシーンをさらに増やす目的で、2011年から酒文化研究所が主催となって「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」が毎年開催されています。当社、菊の司酒造も受賞させていただきました。
受賞酒はこちら↓ ※画像をタップすると商品詳細がご覧になれます。
公式HPでは歴代の受賞酒も閲覧できるのでお勧めです!ワイングラスで何を飲もうかと悩んでいるひとは要チェックです!!
ワイングラスの良いところは
和酒器にはなかった魅力を飲み手にみせてくれる
ことにあると思います。
「ワイングラス×日本酒」はグローバル化が進んだ現世から生まれた新しいカタチをした近代酒文化といえます。しかし、日本にも伝統的な和酒器があることも忘れてはいけません。漆器や陶磁器、和ガラスなどそこには素材の美しさと機能性が共存しているまぎれもない和酒文化です。グローバル化は料理とお酒だけではなく、私たちに酒器選びという楽しみ方を提案してくれました。
お酒を酒器で選ぶ、酒器をお酒で選ぶ。
いつものお酒が違う表情をみせる楽しみがそこにはあります。それぞれの機能性を理解し引き出しを増やしてみるのも良いかもしれませんね。
検証レポートにて使用した、酒器飲み比べカルテは下記バナーより印刷が可能です。ぜひ、お楽しみください!
それでは、第24弾いきます!