「精米」「磨き」に学ぶ!~日本酒の幸福論~
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2018.11.28

「精米」「磨き」に学ぶ!~日本酒の幸福論~

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こんにちは。まっさんです。

金色の稲穂の刈り入れが終わりを迎え、いよいよ酒造りの季節となりました。

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日本人の主食であるこのお米ですが、酒造りの原料でもあることは皆さんもご承知のことでしょう。

酒造りに用いられるお米は酒造好適米や酒米ともいわれます。主な特徴は、お米の中心部に「心白」と呼ばれる粗いデンプン質が集まる白い部分が存在することです。この粗いデンプン質というのがミソで、酒造りにとって非常に大きなメリットになるのです。

粗いがゆえに細胞同士の隙間ができ、麹造りの際の菌糸の入りが良くなり、米粒の内部まで糖化酵素を送り込むことができます。また、吸水率も高いことから菌が米の水分を得て増殖がしやすくなるのです。

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また、酒米はタンパク質や脂質の成分が少ないことがあげられます。普段食べているお米は、外側に多く含まれるタンパク質や脂質などの成分が旨味となるので、玄米の胚芽と糠(ぬか)層を軽く削り取る程度が丁度いいとされていますが、酒米は食用米が旨味として重要視しているタンパク質や脂質などが、必ずしも良いようには働いていません。

というのも、酒造りの発酵の過程で分解されたタンパク質はアミノ酸へと変化するのですが、このアミノ酸が多すぎることで酒に雑味が出てしまうと言われているのです。逆に、アミノ酸が少なすぎると深みのない薄っぺらな酒質になりかねません。脂質については香り成分が昇華するのを妨げてしまうことなどがあげられます。

つまり、酒造りに使うお米はこの成分バランスを調節し理想の酒質へと近づける「精米」が求められるのです。

精米歩合って?

皆さんもよく目にする日本酒ラベルの「精米歩合」や、獺祭(旭酒造)でも話題を呼んだ磨き二割三分といった「磨き」という表記。実際のところ、定義ってご存知でしょうか?

一般的な米粒同士の摩擦や砕けてはじき出た白米の重量減を含む、精米後の白米と精米前の玄米に対しての重量の割合を示しています。これを「見掛け精米歩合」といいます。たとえば、玄米100㎏が精米後に40㎏になると見掛け精米歩合は40%となるように下記の計算で求めることができます。

見掛け精米歩合(%)=精米後の白米重量(㎏)÷精米前の玄米重量(㎏)×100 

近年の目覚ましいコンピューターの発展により精米精度は格段に向上。導入以前は磨いているようで実際はそれほど磨けていない…そんなことがありました。そのため、お米の形状を保った精米後の白米1000粒を抜き出した重さと精米前の玄米1000粒の重さを1000粒単位で比較することで、品質の精度を確認していたのです。これを「真精米歩合」といい、下記の計算で求めることができます。参考までに。

真精米歩合(%)=精米後の白米1000粒の重量(g)÷精米前の玄米1000粒の重量(g)×100

「無効精米歩合」とはこれらを具体的な数値に表すもので、「真精米歩合-見掛け精米歩合」で求められます。無効精米歩合が小さいほど精度の高い精米ができているということです。

進歩する精米のあり方

室町時代頃までは、麹には玄米、掛米には精米した白米を使っていて、これを「片白(かたはく)」といいました。両方とも白米を使うようになったのは水車式精米機が発達した室町時代後半から江戸時代にかけてのことで、当時の水車式精米機の精米は80%が限界だったそうです。

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現代の精米技術の進歩は目覚ましく、それを象徴するかの如く精米歩合1%に挑戦したのが楯野川酒造(山形)の純米大吟醸「光明(こうみょう)」。1%に磨くまで、自社精米機を2カ月半フル稼働させたことが話題となりました。やはり、精米歩合は上げれば上げるほどお米が割れやすくなり、粒の原型を残しながら磨くことはとても困難となるのです。精米時間は精米機やお米の品種にもよりますが、精米歩合70%まで精米するのに10~30時間、35%までだと70~100時間あまり必要とします。

また、1%の挑戦とは対照的に、敢えて磨かない超低精米に挑戦したのが森喜酒造場(三重)の「妙の華(たえのはな)」。これは食用米とほぼ同じ精米歩合90%で醸した、お米のうま味をしっかりと味わえる生酛純米酒です。

大七酒造の精米技術に迫る

お米の形は楕円のように丸くぷっくりとしていますね。一般的には精米はこの細長い玄米から球状に磨いていくのですが、この精米方法では厚みの部分で、不用成分(タンパク質・脂質など)が残りやすく、長さの部分では糖化で有効となるデンプン成分を無駄に削ってしまうという問題がありました。酒造りの妨げとなるタンパク質や脂質などはお米の表面ほど多く存在することから、米粒本来の形状にそって均等の厚さに削ってみてはどうか?という原理に基づき、生酛造りで知られる大七酒(福島)は超扁平精米の実用化に取り組み実現させたのです。この精米方法は他に比べ、多くの時間と職人技のような卓越した技術が必要となるのですが、高い精米品質を生み出すことは専門家も認める技術なのです。

削られた糠(ぬか)はどこへ?

精米歩合が低ければ低いほど、玄米から削り落とされた糠の量も多くなります。

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この糠の行方って気になりますよね?

蔵や精米を行う施設はこの資源を無駄にせず再利用しています。内側の白糠は、ほとんどがデンプン質で米粉として米菓子や団子、おせんべい、最近では米パンや米麺などさまざまな材料として活躍しています。また外側の糠は、糠漬けの原料として、さらには稲作りの肥料に使い、家畜の飼料としても利用されています。このように日本の食文化と日本酒造りが密接な関係であることは知る人も少ないでしょう。

「磨き」は豊富な酒選びへと繋がる

精米の目的は雑味の原因である成分を取り除くことがすべてでしょうか?

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米を磨くほどに吟醸香が立ちやすくなりますが、日本酒の核となるお米の存在感(うま味)までも失いたくはありません。精米は日本酒のバリエーションを豊かにし、私達に選ぶ・味わう・楽しむ喜びを与えてくれるものであって欲しいと思います!!

「和をもって、酒造りの心とする。」

今後とも日本酒の更なる周知に向け進んでいきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。

それでは第11弾!いきます!

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松平隆寿 MATSUDAIRA TAKATOSHI

菊の司酒造営業部2017年入社。一期一会を大切に 和の心を広めていきたいです。
連載「まっさんの日本酒かるた」では、遊びながら日本酒に触れられる日本酒かるたの完成をめざして、
日本酒に関わるワードをわかりやすくご紹介していきます。

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