菖蒲の香りで厄を払おう!端午の節句のはなし
菖蒲の香りで厄を払おう!端午の節句のはなし

2019.05.10

菖蒲の香りで厄を払おう!端午の節句のはなし

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こんにちは!ご無沙汰しておりました、風香です。

4月より菊の司に入社し、正式にコラムを連載させていただける事となりました!

研究室から酒蔵へと畑は移りましたが、本コラムではインターン期に引き続き古典や文化、文学にちょっとだけ科学を交えた「食卓の外の日本酒の話」をしていきたいと思います。

理系大学生改め、理系蔵人の風香をどうぞよろしくお願いいたします。

それでは、理系なのに文系好きの風香の小話。本日は旧歴5月5日(新暦6月7日)の「端午の節句」についてお話したいと思います。

端午の節句は“こどもの日”?

空に錦の鯉がはためき、兜飾りや柏餅で男児の健やかな成長を祝う…「端午の節句」といえば、こんな感じの「こどもの日」を連想する人がほとんどなのではないでしょうか?

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実は、この風習が日本に定着したのは江戸時代になってから。それまでは、田植え仕事をする若い女性たち「早乙女」の汚れを払う「皐月忌み」という厄払いの日だったのです。

古来、中国では端午(午=5月、端=最初の意から5月の上旬を指す)の時期は気温が急激に上がり、病にかかりやすく亡くなる人も多かったため、毒月と呼ばれていました。そのため、厄除け・毒除けをする意味で菖蒲やヨモギ、ガジュマロの葉を門に刺し、 薬用酒や肉粽(にくちまき)を飲食して健康増進を祈願していました。

この風習が日本に伝来し、五節句(参照:不老長寿の菊で秋を祝おう!重陽の節句のはなしhttp://www.kikunotsukasa.jp/column/archives/1931)と混ざった結果、だいたい飛鳥時代あたりに日本の端午の節句「皐月忌み」が誕生したといわれています。

日本の5月といえば、田植えのシーズン。昔の田植えは女性の仕事でしたので、田の神様に失礼が無いよう、女性だけが菖蒲をふいた屋根のある小屋に集まり過ごしたり、神社に籠るなどして厄払いを行いました。

さて、時は流れ鎌倉時代。

武を尊ぶ武士が世に台頭するようになってくると、厄払いに用いていた「菖蒲」が「尚武」と同じ読みをすること、また菖蒲の葉が剣の形に似ている事などから、端午の節句は次第に「男児の誕生・成長の祝い」へと変化していきます。

鎧や兜、刀、武者人形や五月人形を飾ったり、竹竿に布を張った「吹き流し」を立てる風習もこの頃成立したとされています。

また、江戸時代に入ると5月5日は重要な式日に指定され、大名や旗本が江戸城に参り、将軍の息災や御子の生誕を祝うようになりました。町人階級も紙で作った鯉のぼりを竿につけて高く掲げて対抗したり、菖蒲の葉で編んだ縄を地面に打ち付け音の大きさを競う「菖蒲打ち」が大流行!これが現代に息づく「こどもの日」となります。

菖蒲に退魔の力あり!

さて、別称に「菖蒲の節句」とあるように、端午の節句には菖蒲が欠かせません。剣のような見た目や強い香りから、古来より魔除け・厄払いに効果があるとされてきた菖蒲とはいったいどんな物なのでしょうか?

因みに…

多くの人が思い浮かべるであろう紫色の花を咲かせる植物は今回語る菖蒲(サトイモ科)ではなくアヤメ(アヤメ科、花菖蒲とも呼ぶ)ですので、お間違えの無きよう。

菖蒲は祭事や行事の道具としてだけでなく、生薬としても使用されてきました。主に根茎が用いられ、健胃、鎮痛、血行促進や疲労回復に効果があるとされています。生の根茎を刻んで麻袋などで包み、お風呂に入れる「菖蒲湯」は特に薬効が高まるとされ、冷え性改善やリラックス効果など女性に嬉しい効能も!

菖蒲の強い香りの正体はアサロン、オイゲノール、他複数種類のテルペン、セスキテルペンです。

アサロンは揮発性の物質で、主にアロマオイルなどに用いられ殺虫作用などが認められています。

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オイゲノールは淡黄色のフェニルプロパノイドで、刺激のある快い芳香を持ち菖蒲の香りの骨格を担っています。

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テルペン、セスキテルペンはイソプレンという炭素5個でできた柄杓のような構造を基本骨格とした化合物で、前者は植物特有の香りの物質である事が多く、後者は植物ホルモンとして様々な植物中に多く見られます。

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鎮痛作用や血流促進、疫病を媒介する可能性のある虫への殺虫効果…これらの効能が、昔の人々が菖蒲を厄払いの植物とした所以となったのかもしれません。

菖蒲酒のはなし

さて、端午の節句の食べ物といえば柏餅や粽が鉄板。

しかし、飾りや菖蒲湯くらいしか出番がない菖蒲も体に嬉しい効果もある縁起物なのだから、せっかくなら美味しく摂取したい!菖蒲が誇るリクラゼーション効果を最大限に活かすもの、やはり日本酒を用いた「菖蒲酒」に相違ない!

そんなわけで、独断ではありますが「最もおいしく飲める菖蒲酒」を生み出すべく、ちょっとした実験を行いました。

今回使用したのは菖蒲の諸成分が多く含まれている茎の部分。5月初週ごろに花屋さんやスーパーでお買い求めいただけると思います。お酒にはクセの少ない「和の酒 菊の司」を使用しました。

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今回実験を行うにあたり注目した点は以下の2点。

 

・菖蒲特有の香りは揮発性物質に由来するものなので、菖蒲の茎を刻むほど、酒の温度を上げるほど強くなる

・菖蒲の茎を刻むほど、植物特有の辛味や苦味が酒に溶け込む可能性がある

 

この2点を踏まえ、温度3段階×切り方2種類、計6実験区の菖蒲酒を用意し、「最もおいしく飲める菖蒲酒」の配分の決定を行いました。

菖蒲は同量をそれぞれ細かく刻んだもの、粗くぶつ切りにしたものの2種類を用意。

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お酒は10℃、30℃、50℃の20℃刻みで3段階用意し、それぞれ菖蒲を3分間浸した後、香りの強さと味の変化の評価を行いました。

刻みサンプル

ぶつ切りサンプル

さてさて、気になる結果の程ですが…

 

結論から言いましょう!

結果 ver.2

50℃まで温度を上げてしまうと、日本酒の原型を留めない程に香りや苦味が強く出てしまいました…上記2つの結果では物足りないという方のみお試しください。

さわやかな香りの菖蒲酒は食前酒にぴったり!

残った葉の上部も掻敷や箸置きなどに使用すれば食卓もぐっと華やかになります。

菖蒲の香りがきつくなりすぎてしまった!

菖蒲酒に使った後の葉、どうしたらいいの?

心配ご無用!

飲めない代物になってしまった菖蒲酒も、お酒がついて利用しにくくなった菖蒲酒の刻んだ葉も、そのままお風呂に入れてしまえば立派な「菖蒲湯」になります!!日本酒ごとお風呂に入れれば「日本酒風呂」としてのアンチエイジング効果も期待できます。

まさに菖蒲酒に捨てるとこなし!恐れずにトライしてみてください!

↓日本酒風呂に関する詳しい記事はこちら↓
「カラダごとお燗しちゃいました!日本酒風呂でアンチエイジング」
http://www.kikunotsukasa.jp/column/archives/2569

さて、厄払いの「端午の節句」のおはなし、いかがだったでしょうか?

鎧や兜、こいのぼりに隠れがちな菖蒲ですが、何かと疲れがちな現代人に嬉しい効果がたくさん含まれた素敵な植物です。

若草芽吹く5月、是非子供の成長を祝う日として、また疫を払い身を清める日として、ご家族で菖蒲の清々しい香りを堪能してみてください。

それでは、今回はこのあたりで。次回もまたよしなに。

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風香

2019年商品部入社。
元分子細胞生化学専攻の理系。理系ですが歴史や軍記物の読書が趣味です。本コラムでは歴史や文化、古典に時々科学をまじえながら「食卓の外の日本酒の話」をしたいと思います。

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