
2019.07.23
こんにちは!風香です。
ついに東北も梅雨本番。じめっとした空気になる日が増えてきましたね。
髪の毛がまとまらなくなったり、寝苦しかったり…なにかと過ごしにくいこの時期。我が家の近所には綺麗に咲く紫陽花や、陸に上がったばかりの小さなカエルが顔を出します。小さな癒しを求めて、カメラを片手に雨の中うろつくのも中々オツなものです。
さて今回は、7月のメインイベントといっても過言ではない、七夕(しちせき)の節句にまつわるお話です
そも、何故「七夕」と書いて「たなばた」と読むのか、皆さんご存知ですか?
「七夕」は本来「しちせき」と読みますが、「たなばた」と呼ぶようになった由来は、「棚機(たなばた)」と呼ばれる禊ぎにあるといわれています。
古来、乙女が着物を織って棚にそなえ、神さまを迎えて秋の豊作を祈ったり人々のけがれを祓った行事を棚機といいました。
棚機に選ばれた乙女は「棚機つ女(たなばたつめ)」と呼ばれ、川などの水辺にある機屋に籠り、神さまのために着物を織ったといいます。
現代でもよく知られる織姫と彦星の物語は、奈良時代ごろに中国から伝来したものとされています。
古来、中国では織女星(ベガ)は裁縫の仕事、牽牛星(アルタイル)は農業の仕事をつかさどる星と考えられていました。
この二つの星は旧暦7月7日ごろに天の川をはさんで最も光り輝いているように見えることから、中国でこの日を一年一度のめぐりあいの日と考えられるようになりました。
また、中国では7月7日に織女星にあやかり、機織りや裁縫が上達するようにとお祈りをする風習が生ます。
最初は庭先の祭壇に針など裁縫道具をそなえていましたが、やがて機織りや裁縫だけではなく芸事や書道などの上達も願うようになりました。
棚機と中国から伝来した織姫と彦星の物語、そして五節句が混ざり合い、今日の七夕(たなばた)として全国に広まることとなります。
さて、別称に「笹の節句」とあるように、七夕の節句に欠かせない笹竹。
笹竹と書くと笹=竹のような感じになってしまいますが、竹と笹は全く別の植物です。
どちらも単子葉植物、イネ科タケ亜科に属する植物。「丈」が大きくなるのが竹、「ささやか」なのが笹、という風にも言いますよね。
一般に、茎の部分にある皮の有無によって見分けることができるようです。
竹は成長するにつれて皮がはがれ落ち、茎の部分がツルツルしています。一方で笹は、枯れるまで茎の皮がはがれ落ちません。
笹
こっちが竹
笹と竹、この2つの植物に共通する大きなポイントが「筒状の空洞が存在する」事です。
この空洞部分には神様が宿っているとされ、祭事や縁起物としてよく用いられたといいます。かぐや姫が居たのも竹の中でしたね。
また、笹竹は冬の寒さにも負けず真っ直ぐ育つ生命力がある、天に向かって育つなどのことから、これらの植物に短冊や七夕飾りを飾るようになったとも言われています。
さて過去にご紹介した重陽の節句、端午の節句など、五節句ではその節句に縁のある植物を用いたお酒を飲む習慣がありました。
この流れを踏まえると、七夕の節句では笹や竹を用いたお酒を飲みそうですよね。
しかし、いくら調べてみても七夕の節句でそのような酒を飲むという情報は出てきません。
私自身調べていて大変驚いたことなのですが、そもそも七夕の時期にお酒を飲むという風習はなく、甘酒を飲むのが主流だったらしいのです!
それもそのはず。
今ほど衛生の概念や技術が発展していなかった時代では、七夕の時期にお酒を保存、常飲することが出来なかったのです。代わりにこの時期に良く飲まれていた甘酒でお祝いをしたため、現代でも日本酒を七夕に飲むという慣習がほとんどない、ということになります。
何故この時期に甘酒を飲む習慣があったのかは、前回の記事をご参考ください。
甘酒の嬉しい効果、美味しい作り方はこちらをご参考に!
しかし、技術が発達し季節を問わず日本酒を飲めるようになった現代。
七夕は酒が飲めないから飲まない、という昔の慣習を引きずる必要もないのでは?
せっかくの祝い事、飲める理由があるのに飲まないのは損である!
調べてみると、奈良県には竹の筒を用いて作るお燗酒、「笹酒」なる物があるという。
ならば、この笹酒を現代の七夕の酒と使用ではないか!!
そんなわけで、竹取の翁よろしく竹を求める旅に出ることにしました。
時は令和、理系の蔵人といふ者ありけり。
野山にまじりて竹を取りつつ、こらむのことに使ひけり。
名をば、菊の司の風香となむ言ひける。
竹です。かぐや姫は不在の御様子。
残念ながら、我が家の近所には酒を入れることが出来るほど立派な竹は生えておりませんでした。
そんなときは文明の利器の出番。現代っ子な風香は通販で青竹をお取り寄せしました。直径や長さの指定もできる、決済はクレジットで外出も不要、便利になりましたね。
写真の立派な竹筒は越川竹材工業さんより購入したものです。
さて、後は簡単。
届いた竹筒にお酒を注ぎ、アルミホイルで蓋をし、お鍋にお湯を張って湯煎燗に。
今回使用したお酒は、当コラムおなじみの「和の酒 菊の司」です。
湯煎燗について、詳しくはこちら!
青竹の清々しい香りが酒に移り、大変美味!
青竹の香りには(+)-アロマデンドレン(ユーカリなどに含まれる甘い香り)やボルネオール(別名『竜脳(りゅうのう)』、お香などに使用される)が含まれており、リラクゼーション効果が認められています。
陰鬱な梅雨の空気も、笹酒のさわやかな風味で吹き飛ばせそうです。
さて、ロマンチックな「七夕の節句」のおはなし、いかがだったでしょうか?
他の節句に比べメジャーで身近な七夕の節句。織姫と彦星のラブロマンス、星に御願い事をする…それだけではつまらない!
季節にあった甘酒を飲むのも良し。様々なものが発達した現代だからこそ楽しめる新たな日本酒の飲み方を探求するも良し。まだまだ探求しがいのある節句、ぜひお気に入りのお酒と共に楽しんでください!
それでは、今回はこのあたりで。次回もまたよしなに。
2019年商品部入社。
元分子細胞生化学専攻の理系。理系ですが歴史や軍記物の読書が趣味です。本コラムでは歴史や文化、古典に時々科学をまじえながら「食卓の外の日本酒の話」をしたいと思います。