知ってます?夏の日本酒蔵一大イベント「呑み切り」とは
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2019.08.9

知ってます?夏の日本酒蔵一大イベント「呑み切り」とは

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こんにちは!

寒い時期の酒造りを終え、夏を迎える今日この頃。

蔵内では一大イベントが行われます。

それが「呑み切り(のみきり)」なるもの。

ざっくり言うと、冬に搾った日本酒の健康診断。

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そもそも「呑み切り」とは、貯蔵タンクの下部についているお酒の出し口の封を切って行われたことが語源とされており、一般的には初夏を迎え気温が上昇し始めた頃、第1回目の酒質チェックを行うのです。このことを初呑み切りともいいます。

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↑の写真は、呑み切りを行っている風景です。

呑み切りの大々的な目的は?といいますと、日本酒に悪影響を及ぼす、とある菌の存在を早期発見することにあります。

そいつが「火落ち菌」ってやつです。

火落ち菌とは、乳酸菌の一つ。日本酒や味噌を造るうえで欠かせない麹菌(コウジカビ)から生成されるメバロン酸(火落ち酸)というものが大好物で、もぐもぐ食べて増殖していきます。

アルコール耐性は強く、20度程度の原酒であれば難なく住み続けることができるのです。

彼らにとって日本酒の中は、もはやパラダイス。

そんな火落ち菌が貯蔵タンクの中で増え続けてしまうと、お酒は白く濁りってしまい、酸っぱくなるといった厄介なことが起きてしまうのです。

これが「火落ち」なるもの。造ったお酒を台無しにする現象です。

撲滅火落ち菌

火落ちの原因となる、火落ち菌を増やさないためにも気を付けなければならないことは、清潔な環境を整えることにあります。

むかしむかし、日本酒は木樽で仕込み、そして貯蔵していました。

木製ゆえに、隅々までの殺菌や洗浄は難しく、一度、菌が住み着いてしまえば次の年、また次の年と腐造が続くこともあったといいます。

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現代でこそ、ステンレスタンクやホーロータンクなど、温度管理や衛生面など機能性に優れるものを使用し、さらには人体に害のない洗剤を使えることで、衛生面は格段に向上しました。

そして、もうひとつ火落ち菌を抑制する方法があります。

それが「火入れ」工程です。

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アルコール発酵を終えた醪(もろみ)は搾りという工程を経て、透明な清酒となります。この時はまだ生酒ですので、微量の発酵もみられるわけですが、60℃~65℃まで火入れをすることでその発酵は止まり、それと同時に火落ち菌を加熱によって死滅させるのです。

酒蔵の命ともいえるお酒を貯蔵・出荷する前に行う重要な火入れ。アルコール耐性に強い火落ち菌が残っていれば酒質の悪化は避けられないことから、温度コントロールは特に気を配らなければなりません。

新鮮なお刺身でも、時間が経てば臭みが出てくるように、日本酒もオフフレーバーが出るなど酒質にマイナスな方向に進んでいきます。

火入れはすぐ行うことが大切。

当社も搾ってから最低でも7日以内の火入れを徹底。そしてタンク貯蔵ではなく、瓶内貯蔵に取り組んでいます。瓶貯のメリットは香りや味わいを瓶内に閉じ込め、菌による劣化のリスクを抑えることができるのです。

生酒タイプは火落ち菌だらけ?

生酒は火落ちのリスクがぐーんと高まります。

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というか、冷蔵管理をしなければ確実に火落ちします。

フレッシュゆえに味わいの変化に伴い、劣化スピードも速いことから「要冷蔵」は当たり前。寧ろ「要×2冷蔵」という言葉が相応しいと思います。

火落ちを軽減させるために火入れを行ったお酒でさえ、鮮度や味わいを楽しむためにも、しっかりとした温度管理が必須なのです。

今回は、火落ち菌の有無をチェックする呑み切りについてご紹介しましが、設備や技術の向上などによって貯蔵中の火落ちは減少にあります。それによって「呑み切り」の定義に若干の変化が…

下の資料は先日行われた呑み切りの内容です。

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銘柄・参考事項・成分値・商品コンセプトを記載したうえで、担当技官に貯蔵中(当社は瓶内貯蔵のお酒を出品しました)の市販酒を利いていただきます。このように蔵の外部の方々の評価(香味・味わい・熟度)を参考にすることで、今後の酒造りや出荷スケジュールを組み立てることができます。

日本酒は「飲める」ものから「味わう」ものへ。

これも火落ちというリスクが軽減されたゆえかもしれませんね。

まとめ

日本酒は、原料であるお米・水を数々の微生物たちが取り巻くことで形成されたもの、ゆえに周囲の環境をもろに受けやすいのです。僅かな火落ち菌が瓶の中に入っていた場合や、開栓後に空気中に漂う火落ち菌(乳酸菌)が混入して火落ちを引き起こす場合もあります。

「日本酒は生き物」

飲み手の口に入るまでが健全なお酒であるためには、酒蔵はもちろん、それを繋ぐ人たちの日本酒への理解が必要です。

長い歴史を経て、安全で美味しい日本酒を今日も飲めるようになったことは、先人たちの絶え間ない努力と、数々の知恵の賜物だと痛感いたしました。

「呑み切り」もそのひとつ。

「和の心をもって、酒造りの心とする。」

今後とも日本酒の更なる周知に向け進んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

今回の関連記事はこちらです。

 

それでは、18弾いきます!

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松平隆寿 MATSUDAIRA TAKATOSHI

菊の司酒造営業部2017年入社。一期一会を大切に 和の心を広めていきたいです。
連載「まっさんの日本酒かるた」では、遊びながら日本酒に触れられる日本酒かるたの完成をめざして、
日本酒に関わるワードをわかりやすくご紹介していきます。

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