
2019.09.27
「七福神」は岩手県盛岡市に蔵を構える菊の司酒造が醸す日本酒です。
当蔵は1772年に酒造創業し、お客さまに支えられて岩手県で最も古くからお酒造りを磨き続けてきました。
蔵の真裏を流れる中津川(なかつがわ)は県庁所在の市街地にありながら川底が美しく煌めく清流であり、夏はアユ、秋はサケが姿を見せる自然にあふれています。そんな中津川伏流に湧く水を蔵内の井戸で汲み上げ、仕込み水として日本酒を造っています。中軟水には岩手の山々から染み出たミネラル分が適度に含まれ、麹菌の発育や、酵母の発酵を促進し、清らかでメリハリのある当蔵の味わいには欠かせない、命の水です。
日本酒「七福神」は石鳥谷町・箱庄酒造店から引き継いだブランドです。
「てづくり七福神」に代表される市販吟醸酒のパイオニアとして1960年中ごろから全国各地のお客さまにご愛顧いただいております。南部杜氏の技術による淡麗な酒質を信条に、時代に合わせて細部を調整しながら、まさに進化を続けている日本酒。それが「七福神」なのです。
てづくり七福神の発売当時、それは三増酒(三倍増醸酒)の全盛期でした。
三増酒とは仕込んだもろみに醸造アルコールや糖類、酸味料などの副原料を加え、文字通り3倍の量に増量する、いわば「かさ増し」の日本酒です。第二次世界大戦時の深刻な米不足に対応するための苦肉の策でしたが、好調な景気情勢も相まって、依然として経済性の高い三増酒が市場に多く出回っていたのです。ちなみに現在の法令では副原料の使用上限が定められており「三増酒」を造ることはできません。
そんな時代の真っ只中で、岩手県の小さな酒蔵である当蔵は、大手メーカーが製造する商品に対抗するための酒を模索しておりました。
当時の日本酒は、三増酒をはじめ価格が非常に安く楽しめる反面、味が甘く、料理と合わせたり飲み続けるのに重たい。そこで、糖類や酸味料による調味ではなく麹と発酵によって味わいを引き出した日本酒を追究しました。つまり「経済的な酒」ではなく「味わう酒」を求めたのです。
試行錯誤の末に完成した「てづくり七福神」はまさに水のように淡麗な飲み心地をご評価いただき、地元飲食店では「ほかのお酒よりも銚子一本多く飲んでいただけるお酒」として次第にその輪を広めていくことになります。
当時、東京農業大学で行われていた「全国酒類調味食品鑑評会」は全国新酒鑑評会に並ぶ権威でしたが、金賞3点、銀賞2点を獲得し「ダイヤモンド賞」を受賞。一般的に流通していた日本酒の約7倍の原価がかかり、手間もかかる吟醸造りでしたが、地元酒販店さまの後押しもあり東京マーケットへの進出をきっかけに全国のお客さまに「七福神」をお楽しみいただけるようになりました。
てづくり七福神には、おいしいお酒をお届けしたい私たち造り手の情熱と、おいしいお酒を楽しみたい飲み手のみなさまの想いが詰まった日本酒なのです。
菊の司酒造では、みなさまにおいしいお酒をお届けするためにベテランと若手が一丸となり、日々試行錯誤を重ねながらお酒造りに取り組んでいます。
当蔵で使用している原料米のうち、90%以上が岩手県で育まれたお米です。
岩手県のオリジナル酒米「吟ぎんが」「ぎんおとめ」「結の香」のほか、「ひとめぼれ」などの飯米も使用します。一部のお米は農家さんと一緒に契約栽培されたもので、よりよい原料米の確保に努めています。また契約栽培はその年の米栽培の状況をいち早く、詳細に入手することができ、米質に合わせて適切に酒造りをすることができます。
また、もろみでは麹の糖化力、酵母の発酵力を引き出し、のびのびと微生物が活動できる環境づくりが大切だと考えています。
日々の分析を通して操作をし、ストレスなく発酵を完了させます。搾り出たお酒の香味を損なわないため、矯正が必要な場合を除いて一切炭素ろ過をせず、1週間以内の間でなるべく早くビンに詰め、冷蔵貯蔵しております。搾った後、アルコール度数の調整のために加水をすることがありますが、バランスを崩さないよう、原酒での瓶詰めを基本としています。
当蔵のお酒造りは、日本酒が本来持っている個性や特長を引き出し、それを損なわないことに細心の注意を払い酒造りに取り組みます。
日本酒「七福神」のフラッグシップです。
「和心伝匠(わしんでんしょう)」は当蔵のお酒造りのモットーである「和をもって酒造りの心とする」を表した言葉です。伝わり受け継いだ七福神の心を次世代にしっかりと引き継ぐ、私たちの決意が込められています。
酒米の王「山田錦」を使用し本州一寒いといわれる盛岡の冬の深まりに、約1ヶ月の超低温発酵によって丁寧に醸しだした一本です。発酵したもろみは圧力をかけない搾り方で滴り集め、原酒のまま火入れ瓶詰め。南部杜氏が醸す華やかな香りと芳醇な飲み心地をご堪能ください。
発売以来半世紀を越えて、三世代のお客さまよりご愛顧いただいている「てづくり七福神」。
地元酒米「吟ぎんが」を使用し、余計な甘みを残さず丁寧に低温発酵させた淡麗な純米大吟醸酒です。和食との相性が良く、上品な香りとキレの良い後味がお料理に華を添えます。
特約店様限定流通の純米吟醸、七福神「WABISABI」シリーズ。
日本古来の美意識「侘び寂び」を伝統的な吟醸造りの味わいに見いだし、香りや甘味に頼らない、奥深い吟醸味を追究するブランドです。
「愛山(あいやま)」「吟ぎんが」「亀の尾」「雄町(おまち)」の4種類のお米を使用し、それぞれの味わいをお楽しみいただけます。
WABISABIは当蔵では一般販売しておりません。販売店さまについては当蔵までお問い合わせください。
七福神のライトモデル純米酒。
お米が持つ旨みを引き出し、吟醸酒同様に丁寧に造りこんだ、日常の晩酌にぴったりな一本です。辛口タイプもあり、食のプロである飲食店さまからもご好評いただいております。