
2016.10.12
まいど!ゆーきです。
「口かみの酒」ってご存知ですか??
読んで字のごとく、原材料を口で噛んで造るお酒ですね。日本酒の起源であるともされていて、その歴史は弥生時代までさかのぼります。
最近だと映画「君の名は。」でヒロインの三葉が、神社の儀式で口かみの酒を造っていたシーンもあり話題になっています。
ということで今回は、口かみの酒特集いってみましょう。
わたしたちの唾液の中には酵素(こうそ)が含まれています。
酵素とは、物質の化学反応を触媒する分子です。超わかりにくい。
口かみの酒で活躍するのはアミラーゼという酵素です。たとえば、米を原料としましょう。米に含まれるデンプンは、糖の分子がたくさんつながってできています。そのつながりを切り取るハサミのようなものが、酵素です。
では、なぜ切り取る必要があるのでしょうか??
ここで登場するのが酵母(こうぼ)。
ややこしいですが酵素は物質(生き物じゃない)で、酵母ちゃんは微生物です。
酵母ちゃんは糖を食べてアルコール発酵してくれますが、おちょぼ口なので、デンプンのままだとでかすぎて食べられません。そこで、食べやすい大きさにカットしてあげるのが酵素の役目なのです。
日本酒の場合は、麹菌に生産してもらった酵素を使うのですが、口かみの酒は唾液中のものを使う、ということになります。
これを発見したヒトは、相当な変態だったに違いありません。
口で噛んで吐いたものをとっておくなんてシチュエーション、当時はあったのか。いや、たまたまその辺に放置していたゲ○からいい匂いがしたのでしょうか。もしかしたら、タイムスリップした呑兵衛が当時の人たちに教えたのかもしれません。どっちにしろ筋金入りの変態です。ぼくが弥生時代にタイムスリップしたとして、どんなに酒が飲みたくても、道端のゲ○からおいしそうな香りが漂っていても、それを口にすることは絶対に無いでしょう。
映画の中でもそうでしたが、口かみ酒を造るのは神社の巫女(処女)の役目だったようです。
当然ながら口かみ酒が飲まれていた時代というのは、酵素でデンプンを分解する、とか、酵母がアルコール発酵している、とかだれも知りません。おいしいお酒ができることもあれば、腐ってしまうこともある。なんでなのか知りたいけど、わからないから「神様のいたずら」であるとされてきました。穢れから遠いものとして処女が連想されるのは、こういう時のお約束です。穢れなき美少女が噛めば、神様の機嫌もよくなるだろう、と考えていたかもしれませんよね。ぼくが神様だったら絶対飲みませんが。
たぶん、その当時の呑兵衛たちは若い女の子のお酒が飲みたくてそんなことを言っていたのかもしれませんね。酒蔵が女人禁制だった時代もありましたが、いつ切り替わったのでしょうか。酒蔵が女人禁制だったのは、お酒の神様が女で、女性が蔵に入ると神様が嫉妬するからだという話もあります。だとしたら口かみの酒は処女ではなく童貞の仕事ですよね。
ちなみに、個人的には橋本環奈ちゃんよりも菅野美穂さんが造った口かみの酒を希望します。
もうひとつ映画を観ていて気になったことがあります。
口かみの酒は密造酒、つまり違法ではないのか。
結論から言うと、基本的には違法です。
基本的に、といったのはアルコール度数が1%に満たない時は例外です。酒税法では、アルコールが1%以上含まれているものを酒類と定義しています。そのため、アルコール分が1%になった瞬間、そのゲ○は酒になります。酒類製造免許がないアルコール発酵は密造で刑罰の対象になり得るので気をつけましょう。
ちなみに、梅酒などのリキュールやカクテルなども細かく規定されていますが、個人で楽しむ分にはセーフの場合が多いです。
対して口かみの酒がアウトなのは、発酵が続けばアルコールが増え続ける可能性がある点と、衛生面でしょう。
酒税法とは酒税をきっちり徴収するためにあるものです。噛んで吐くだけ、という簡単な方法で酒がその辺で造られては、正しく税金を回収できないばかりか、免許を受けたお酒が売れなくなり、税収が減るおそれもあります。
あとは単純に汚いです。口に含んで吐きだしたその瞬間から、空気中を漂っているさまざまな雑菌が入り込んでいきます。考えただけで鳥肌がたちます。
ですから、興味本位で「口かみ酒つくってみた!」的なチャレンジをするのはやめましょう。
いかがでしたか??
日本酒がこんなところから始まっていたなんて、なんとも不思議ですよね。
ぼくも麹で造ったおいしい日本酒に感謝したいと思います。
では。