
2019.11.22
桃子です!
みなさんはお酒を贈ることはありますか?大人になれば、何か節目に贈ることもあるかと思います。一般的に高級とされることが多い大吟醸クラスなどの贈答に用いられるような日本酒の装飾は落ち着いた色合いで赤、紫、青、紺の色が使われていることが多いようです。
どうしてでしょう? 高級な色ってなんでしょう!?
今回の「美の徳利」は日本酒パッケージにおける高級×色がテーマです。
高級な色…やっぱり金色でしょうか?
実はこのような結果が出ているのです。
「色に関する意識調査」(インテージ、日本カラーデザイン研究所)によると、最も高級と感じるのは「金」、次いで「銀」、「黒」の順でメタリックカラーが高い割合を占めていることが分かりました。さらに、「エンジ」や「ワイン」、「紺」も上位に入っており、赤系、紫系、青系で重厚感のある暗い色に高級感を抱くことも明らかになっています。
金色や銀色は貴金属を連想させ、大切な節目に用いられる、言わずとも特別で輝かしい色です。ちなみに色を定量的に表すマンセルシステムを使えば、全ての色を記号や数値で表記できますが、金や銀の光沢、輝きだけは表現できません。そのような意味でも、特別な色なのかもしれませんね。
では、金色や銀色以外はどうして高級な色だと感じるのか。もしかしたら、日本の歴史と色の組み合わせが関係しているのかもしれません。
現在では衣服は自分の好きな色を身に付けることができますが、それは明治時代に色図(いろず)を使った色彩教育が開始され、合成顔料も大量に輸入されるようになり、衣服は鮮やかな色に変化したことが関係しているでしょう。
橋爪貫一『小学色図問答』における色図
それ以前の時代はというと、地位や身分は衣服の色で表されていました。「冠位十二階」は日本史に詳しくない方も聞いたことがありますよね?
日本で最初に明文化された服制は、日本書紀によれば推古天皇の時代に聖徳太子・蘇我馬子らが制定(603年)した冠位十二階とされています。これは冠(帽子)で地位あるいは身分の序列を分かるようにしました。
位色は上位から紫、青、赤、黄、白、黒の六色が配されそれぞれの色の濃淡で二段階に分け計十二階でした。同形色の色では濃い方が高位になり、濃紫が最上位になります。紫色の貴重さが想像できますね。
また、合成染料や合成顔料がなかった当時は衣服を濃い紫色に染めるには、貴重な紫草の根が大量に必要であり、労力と時間もかかりました。
加えて、日本の冠位制度では紫が最上位の色として位置づけられていたものの、最も高貴な存在である天皇を象徴する色としては白や黄丹(おうに)・黄櫨染(こうろぜん)などの黄色、青白橡(あおしろつるばみ)、赤白橡(あかしろつるばみ)といった青色、赤色も禁色にあたる高貴な色として位置づけられていました。これらの色は個人の好みで自由に色は使えなかったため禁色(きんじき)と言われました。
そういえば、先月には即位礼正殿の儀が執り行われましたね。正殿の儀では天皇専用装束の黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)をまとって高御座(たかみくら)に上がってお言葉を述べられていました。
色に注目すると、黄櫨染御袍は黄色、高御座の絹織物のとばりは紫色です。黄色と紫色は補色関係でお互いの色を引き立て、単色で見た時よりもより鮮やかに見えます。黄櫨染は太陽の輝きを表していると言われているため、色の持つ意味合いもより引き立てられます。
NHK NEWS WEBより引用
赤系、紫系、青系の色に高級感を感じるのは、昔使用できる色が制限されていたことや原料の希少性、色の組み合わせが関係していそうです。だから、高級な日本酒の装飾の色に使われていることが多いのかもしれませんね。
画像のシャンパン(左)、大吟醸(右)は値段も質も高級ですが、どちらが高級そうに見えますか?
高級と感じる感覚は人それぞれですが、コラム序盤で紹介した「色の意識調査」の結果を踏まえるならば、右側の日本酒のほうが高級と感じる方が多いのではないかと思います。
ここでは日本酒の装飾の色に(だいたい)共通している高級感を感じる色のポイントをご紹介します(日本カラーデザイン研究所参考)。知っておくと、日本酒を贈る時の包装の参考になること間違いなしです。
明度は色の明るさの度合いです。明度を調整することで贈り物の雰囲気を上手に操作することができますよ。明度が高いと色味が華やかになります。逆に、低いと色味に重厚感が出ます。重厚感を出すなら、明度50~70%ぐらいがオススメです。
画像の3色を比較してみると、彩度100%は鮮やかで派手な印象になります。彩度50%、20%のほうがやわらかで落ち着いた印象になります。高級感を出すなら、彩度を抑えて落ち着いた色味にするとイイかもしれません。
彩度の低い色を複数使うと、全体の印象がぼやけることがあるのでアクセントカラーとして1色の彩度を高くすると、引き締まった印象にすることができますよ。
彩度や明度を調節しても、たくさんの色を使うと統一感が無くなってにぎやかな印象になってしまいます。
最後に当蔵の「純米大吟醸 菊の司 結の香仕込」は赤系、お酒の顔ともいえるラベルは金字、「大吟醸 てづくり七福神 和心伝匠」は青・紫系、銀字で落ち着いた雰囲気と統一感を出しています。高級感あふれるこちらの商品は贈り物として選んでいただくことも多いんです。是非チェックしてみてくださいね!
ここまでのところで高級感を出す色とポイントが分かったので、包装してみました!すでに包装されている日本酒を購入するのもいいと思いますが、オリジナルの包装も乙だなと思ってやってみました。でも、クオリティは期待しないでください…
光の具合で見えづらいですが、「和の酒 菊の司」を包装してみました。ラベルを見せたいと思ったので、和紙のような不織布を使用し、首のところは水引で結んで、白色で統一しました。
ちなみにきれいに飾り結びをした水引を使うとグレードアップ!
100均で売っていたご祝儀袋の水引部分を使用してみました。ピンクの梅などいろんな色と結び方の水引がありましたが、上品で引き締まった感じにしたかったので金色と青色の水引を選びました。
今回のコラムいかがでしたか?日本酒の装飾の色について気にしたことが無い人がほとんどだったのでは?調べていると日本の歴史や原料に関わるところで当時の自然環境など様々な要素がつながっていて、高級感を感じる色彩感覚やデザインに反映されているのかなと思いました。
高級感は商品のデザインや個人の感覚に寄るところが大きいと思いますが、同じ色でも明度や彩度が違うだけで印象がかなり変わりますね。ご紹介したポイントは一例として知っていただけたら嬉しいです。
それでは、次回の「美の徳利」もお楽しみに!
商品部2019年入社の蔵人女子。奥深い日本酒の世界を日々勉強中です。連載「美の徳利」では、日本酒を「美」にまつわる視点から取り上げ、飲んでおいしいだけじゃない日本酒の魅力をお伝えしていきます。