
2019.12.13
こんにちは!
よほど興味がないかぎりは「日本酒は日本酒でしょ」と、1種の飲み物としか捉えられていないことがまだまだ多いと感じるこのごろです。
多様化が進む日本酒マーケットだからこそ、いま飲んでいるお酒がどんなものなのかを知れば楽しさはもっと増えるのでは??という想いを込めつつ、意外と豊富なカテゴリーにまつわる日本酒のお話させていただきたいと思います。
日本酒の主な原料は水と米と麹(米麹)であります。プラスαで酵母菌や乳酸菌も含まれますが、ややディープな話になるので本日は割愛とさせていただきます。
この3つの原料を基礎とし醸される日本酒はおよそ10に分類され、水・米・米麹のみで造られたお酒を「純米系」。水・米・米麹に醸造アルコールを加えたものは「本醸造系」や「吟醸系」と呼んでいます。これらをひとまとめにしたものを特定名称酒とし、清酒の製法品質表示基準(お米が3等以上かつ米麹を15%以上使用していること)を満たしていることが条件にあります。特定名称酒の設定は品質維持、また市場バランスを公平に保つために必要なものといえます。
精米歩合や添加するものによって分類される日本酒は意外と多いものです。それぞれ基準が定められており、これを満たしていれば名称は蔵で決めることができます。極端な話、特定名称酒の条件を満たしている醸造アルコール抜きの精米歩合40%のお酒であれば、普通酒~~~純米大吟醸酒の中からどれかひとつを名乗れるのです。
仮にこのような規定がなく、全てが純米規格だとしたら日本酒の世界はどうなっていたのでしょう?なんて興味も沸いてきます。
規制なしのお酒は一般的に普通酒と呼んでいます。これら普通酒には、国税庁や酒造組合が定めた明確な基準はありませんが、ざっくりと2種類にわけることができます。
主原料に醸造アルコールだけ添加する「普通アル添酒」と、主原料+醸造アルコール+調味料(酸味料・糖類)を添加した「普通アル添調味酒(造語)」です。
この2つの違いは酸味料や糖類など酒味を調えるための調味料が入っているか入ってないかにあります。ラベルにもきちんと表記されているので、普通酒の飲み比べも面白いかもしれませんね。
ところでアルコール添加をする意味ってなんでしょうね?
日本酒は麹の出す酵素によってお米のデンプンを糖分に変え、その糖分を酵母菌がモグモグ食べることによりアルコールが生成されます。
そのピュアなアルコールとは別に、普通酒や吟醸系のお酒には先ほど説明したようにアルコールが添加されるのです。
はてはて?
ピュア発酵させたアルコールに別のアルコールをぶっ込む。
よく考えると謎ともいえるこの行為、しっかりとした理由があるのでした。
アルコール添加をするようになったのは江戸時代のこと。
何百年前のことですから衛生面はいまより良いとはいえず、悪さをする菌の汚染による腐造酒は後を絶ちませんでした。そのひとつが火落ち菌の一種である腐造乳酸菌によるものです。こやつはアルコール発酵中(醪)の段階から悪さを始めていき、酵母菌の働きを邪魔します。結果、酸度高となり、すっぱいお酒になってしまうのです。そんな菌にいつまでも酒造りを妨害されたくありません。
そこで考えた江戸時代の人たち。
経緯は不明ですが…。高アルコールは火落ち菌の増殖を抑えることを突き止めたのです。
当時はいまのように醸造アルコール(原料/サトウキビの糖蜜+酵母)というものはまだなく、米や酒粕を原料とした本格焼酎を添加していたと伝えられています。このテクニックは「柱焼酎」と呼ばれ、菌による腐造を防ぐだけでなく、原料由来の風味とすっきりとした味わいをもたらすという新たな日本酒の発見になりました。
アルコール添加は酒質を安定させることにあります。
江戸時代から始まった「アル添」。それは火落ち菌による汚染のリスクを抑え、香味まで良くなる画期的な新技術です。そんなアル添を揺るがす時代がおとずれます。戦争です。第二次世界大戦後、日本酒の主原料であるお米は不足に陥ってしまします。
そこで登場したのが三倍増醸清酒。
略して「三増酒」は水・米・米麹から造られるアルコールを1とすればその2倍の量の添加物ないし醸造アルコールを加え、トータル3の量まで増量させたお酒です。
もはや、主役がどちらかわからなくなったお酒は日本酒とは呼び難いものですよね。米不足が解消された後も低コストでつくれることを理由に生産は続きますが、粗悪な酒質はやがて消費者の目には止まらなくなります。
「かさ増しだけのアルコール添加」という悪いイメージを残したまま、平成18年の酒税法より三増酒は消え、仮にそういったものがあっても現在は雑酒・リキュール類として扱われています。
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この背景から、アルコール添加しているお酒に苦手意識を持つ人がいるといわれていますが、この話を聞いて少しイメージが変わり…ました…か?
本来の良きアル添メリットを知ることで、心機一転アル添酒を楽しんでいただきたいと僕は思うのです。
平成24年には当時の古川元久国家戦略担当大臣によって、日本酒と焼酎が国を代表する「國酒」になりました。日本酒造りの歴史から考えるとつい最近のことに思えますが、日本の國酒は?と聞かれて答えられる人はどれくらいいるのでしょう。
日本の風土が育んだ原料、そして長きにわたる酒造りの技術が交わって生まれた日本酒ですが、最近ではアメリカやカナダ・オーストラリアで日本酒が造られるほどです。この広がりは嬉しいことなのですが、日本でなくとも造れるというのが現実です。
ドイツの話をすると、ドイツのビール生産量は世界的にもトップクラスにあります。ビール醸造所は約1200、その銘柄は約5000種類。
実はビールの発祥地ではないドイツがここまでのビール大国となったのには、およそ500年前から守り続けられている水・大麦・ホップの3つの原料以外は使用を禁止するという「ビール純粋令」が大きな柱となっています。
この揺るがないこだわりが国民を巻き込み、ビール愛国が誕生したのです。
日本も原料を規制した品質維持を行ってはいますが、ビール純粋令のようにしっかりと取り組んでいかなければ、発祥の地でなくともそれに近しいもの、それを超えるものが生まれるということです。
豊富な日本酒のカテゴリーは飲み手へ選ぶ自由をあたえる素晴らしい流れをつくっています。しかし、日本で醸される日本酒が世界一のお酒と言われ続けるためには維持はもちろんのこと品質向上に目を向けていかなければならないと思います。
「和の心をもって、酒造りの心とする。」
今後とも日本酒の更なる周知に向け進んでいきたいと思いますので、ヨロシクお願いします。
それでは、21弾いきましょう!
菊の司酒造営業部2017年入社。一期一会を大切に 和の心を広めていきたいです。
連載「まっさんの日本酒かるた」では、遊びながら日本酒に触れられる日本酒かるたの完成をめざして、
日本酒に関わるワードをわかりやすくご紹介していきます。