2020.10.4
桃子です!
もしかしたら一度はどこかで写真のコレを見たことがあるのではないでしょうか?
私は、居酒屋の店員さんが身に着けているイメージがあります。あと、サザエさんで三河屋のサブちゃんが着用しています。
写真の彼女は同期の片岡風香(ふうちゃん)。友情出演です!
紅白の腰ひも、裾にフサがついた藍色の前掛け。正式には帆前掛けと言い、日本らしい空間によく馴染みます。私たちは普通に身に着けていますが、この前掛けって結構決まった職業の人しか腰に巻いてないかも??
普段に何気なく目にしている、着用しているユニフォームには様々な歴史がある。掘り下げてみると面白い発見があるかもと思い、今回は私たちが身に付けている前掛けについてご紹介します。
それでは、「美の徳利」スタートです!
帆前掛けの特徴はシンプルに2つです。
帆前掛けのデザインは紅白の腰ひもに紺の生地がスタンダードで、紅白と紺の色の理由は調べても明確な理由は分かりませんでしたが、「紅白」=おめでたいもの、商売繁盛という意味が込められているようです。
下のふりふりがフサです。帆前掛けも綿織物の1つ。織物は本来神聖なもので、神様への献上品として作られた貴重な布でした。その高貴な織物には、極力手を加えていけないという意識が、製法にも受け継がれているそうで、縦糸を残して切り落としたままになっています。また、神社のしめ飾りがモチーフとも言われており、腰ひもと同じように、商売繁盛の意味が込められています。
伝統的な帆前掛けですが、いつ生まれたのでしょうか。
前掛けの誕生については諸説あり、定かでない部分もありますが、室町時代まで遡ります。当時は現在のような帆布の前掛けではなく、労働着として小袖というものを袴なしで着るようになり、これに腰布を巻いていました。日本服飾史のHPでは鎌倉時代の衣裳として紹介されていますが、この姿がイメージに近いのでないかと思われます。
小袖、かけ湯巻をつけた女
日本服飾史HPより引用
そして、江戸時代には現在の前掛けに近いのもができたと言われていて、明治時代から屋号が染め抜かれ、ユニフォームや広告宣伝としても使われるようになりました。丈夫な帆布は船の帆になったり、テントやジーンズになったりと様々な場面で使用されており、帆前掛けになったのも、不要になった船の帆で前掛けを作ったからだと言われています。
帆前掛けの産地である愛知県豊橋では、戦後1950~70年代かけて爆発的に広まり、多い時には1日に1万枚が出荷された時期もあったとのこと。日本の経済成長とともに、生産量も増加し、全国の酒蔵さんやお米屋さん、味噌屋さん、醤油屋さんなどあらゆる業種で次々と会社やお店の屋号、名前が入った前掛けが作られ、全国に広がりました。
次に前掛けの機能についてです。汚れ防止と思いきや、それだけではないのです。
まずは、腰痛の防止です。前掛けはベルトの少し下ぐらいの腰骨あたりで締めるので、骨盤が安定し、重たい物を持つときに腰への負担を軽減させてくれます。そのため、酒屋さんやお米、味噌屋さんなど、重い物を持つ職業の人が好んで使っていました。ここがウエストで結ぶエプロンとの違いにもなっています。
次に、肩や衣服を守る役割です。腰に巻くのに肩?と思いますが、昔はお酒を運ぶ時は木箱に入れていたので、服が破けないように肩にあてて運んでいました。ちなみに、現在では木箱に代わってプラスチック製の酒類運送箱(通称P箱)が広く利用されているので、実際に肩にあててお酒を運んでいる姿は見かけなくなりました。
ちなみにこちらが昔使用されていた木箱です。木箱だけの重さで約3.5㎏なので、一升瓶をフルに入れたら、プラス1.8×8本の重さで約18㎏ぐらいでしょうか。
まず、肩に担ぐことがすごい。力持ち…。
こちらが現在使用されているP箱です。木箱よりは軽く、持ちやすく、丈夫です。蔵からお酒を配達するときなどはこのP箱や段ボールに入れます。
最後に、宣伝・広告の役割です。職業にもよると思いますが、現在ではこちらの意味合いで使われることが多いような気がします。名刺代わりというか、サラリーマンで言うところのスーツみたいな、どこの人か分かるためのものになっています。弊社の前掛けも銘柄と社名などが染め抜かれています。
前掛けには様々な役割がありましたが、ちょっと意外なところでも活躍するんです!
まずは、キャンプやバーベキューなどアウトドアに最適!防火仕様ではありませんが、生地が厚いので熱やケガから守ってくれます。また、裾の部分を持てば炭や細々とした道具も楽に運ぶことができます。
寒い時期には足元がスースーしないのでひざ掛けの代わりにもなります。
次に、帆前掛けを生地としてバッグや財布など実用的なアイテムに変身させるのも、どうやら流行っているようです。
インスタグラムでもタグがいっぱい!
https://www.instagram.com/p/B5Am_Vyg7ac/?utm_source=ig_web_copy_link
https://www.instagram.com/p/B88hKADgMbA/?utm_source=ig_web_copy_link
私は知人が帆布のトートバッグを持っていたのを遠目に見て、なぜ前掛け持っているのか素で尋ねたことがあります。少し恥ずかしかった。
最後は、前掛けがそのままデザインになっているのを発見しました。缶酎ハイを飲む方やレモンサワー好きの方はご存知かもしれませんが、日本のコカ・コーラ社から販売されている檸檬堂(れもんどう)。缶のデザインをよくご覧ください。
こだわりのレモンサワー檸檬堂4種
日本コカ・コーラ 檸檬堂HPより引用(https://www.lemondo.jp/interview/)
はっ!前掛けが描かれているではありませんか。
缶酎ハイといえば、キラキラで鮮やかな色使いのパッケージが多いですが、檸檬堂のデザインはとても和風で本格的な感じがにじみ出ています。
前掛けなのは、ブランドのキャラクターを考えたときに職人のような大将という人物像を設定し、その大将がお客さんを出迎えるときにしている藍染の前掛け、というイメージでデザインしたそうです。
日本人に昔から着用されている仕事着だからこそ、帆前掛けが醸し出す雰囲気や持つ魅力があるのですね。
手土産にいかがでしょうか!当蔵オリジナル前掛け
コラムの初めから登場していますが、弊社にもオリジナルの前掛けあります!
(同期の片岡、2度目の出演!)
二大銘柄の「七福神」と「菊の司」が染め抜かれています。ポケット付きで深いので、立ち座りしても、中に入れている物が落ちる心配もありません。
他の酒蔵さんの前掛けよりすこし長めですが、意外と歩きやすい!使って洗っているうちに濃紺が褪せてヴィンテージ感が出ると、さらにかっこよくなります。
お酒好きな方へのプレゼントにもおすすめですよ!
前掛けのECリンクをお願いします
まとめ
今回のコラムいかがでしたか?
普段私たちが身に付けているお仕事着、帆前掛けについて取り上げてみました。作業する時は会社の制服を着ているので、配達の時やイベントの時に着けていることが多いです。
やっぱり腰ひもを締めると気分がシャキッとします!
では、次回もお楽しみに!
参考
日本服飾史HP「小袖、かけ湯巻をつけた女」
日本コカ・コーラ 檸檬堂HP 『開発者インタビュー 日本の酒文化に学んだ新製法「檸檬堂」のすべて』
有限会社エニシングHP「前掛けの歴史」