2022.07.31
原料米・精米歩合・酵母・火入れ有無などすべてのスペックが【謎】の日本酒「菊の司酒造[ 非公開 ] 2022」。(※以下、[ 非公開2022 ]とさせていただきます。)
いよいよ利き酒クイズの正解発表です!!みなさんは何問当てることができたでしょうか?
酒米などのスペックをすべて非公開とし、先入観にとらわれず、お客様自身の感覚でお酒を楽しんでいただきたいというコンセプトで企画したお酒です。またラベルのQRコードを読み取ると利き酒クイズに挑戦できるという、革新的(?)な試みでもあるのです!!
「非公開」4年目の今年も本当にたくさんの方々から挑戦していただきました。ありがとうございます!
またお取扱いいただきました酒販店様ならびに飲食店様におかれましては、当商品の趣旨にご賛同いただき、お客様に楽しんでいただけるよう、多大なるご協力をしていただきました。重ねて御礼申し上げます。
[ 非公開2022 ]の精米歩合は「60%」です。
この問題は半数近くの方が正解していました!
多くの日本酒造りの場合、使用するお米の外側を磨き落とす精米という工程があります。実際に使用する白米の玄米に対する重量比を精米歩合(せいまいぶあい)といい、精米歩合60%とは玄米の40%を磨き落とした白米を意味しています。
米の外側にはタンパク質や脂質が多く含まれています。
それらは食味には良く旨味や米のツヤとして必要なもので、日本酒においても旨みとして感じられる成分です。しかし、多すぎると逆に雑味の原因となります。
そのため、米の外側をある程度削り、内側のデンプン質が純粋な部分を酒造りに使用しています。
[ 非公開2022 ]に使用されている原料米は「ふくひびき」です。
多くの方が「吟ぎんが」や「結の香」といった岩手県オリジナルの酒造好適米を選択していました。皆様やはり地元原産のお米を使用しているというイメージを持たれているようです。しかし、ここで多くの方が不正解となってしまいました。
「ふくひびき」は平成5年(1993年)に東北農業試験場によって育成された品種で、岩手県・秋田県以南の東北地方が栽培適地とされています。
とはいえ中々岩手県と結びつかない方も多いかと思いますが、それもそのはず。今年の非公開はなんと岩手県では初の「ふくひびき」を原料米とした日本酒なのです。
(この問題は少々ずるかったかもしれませんね…。)
「ふくひびき」を使用して作った日本酒はアミノ酸が比較的少なく、雑味がないとされています。皆さんは今回どのように感じたでしょうか?
[ 非公開2022 ]に使われている酵母は「K901」です。
この問題は毎年出題しているのですが、ハッキリ言って超難問です。己の感覚を信じていざ選択!といった思い切りの良さが必要となります。
ここでも岩手県オリジナルの酵母に回答が集まる結果となりました。
大きく分けると「K1801(きょうかい18号)」と「ジョバンニの調べ」はカプロン酸エチルというメロンやリンゴ、イチゴなどに喩えられる果実香の成分を多く生成する酵母、「K901」と「ゆうこの想い」は酢酸イソアミルというバナナや洋ナシなどトロピカルな香りに喩えられる香り成分をつくります。
特にカプロン酸エチルは人気で、現在の各種鑑評会やコンテストなどでも非常に重要視される香気成分のひとつです。そのため、各都道府県オリジナルのカプロン酸エチル高生産酵母の開発が展開し、非常にたくさんの酵母が全国各地の酒蔵で使われています。
昨年度はブレンドで酵母を使用したお酒でしたが、今回の[ 非公開2022 ]は発酵力が強くタフな「K901」を単体で使用し、べたつきのない味わいを目指しました。
[ 非公開2022 ]は「アル添無し」の日本酒です。
この問題はラベルの原材料名をよく見ると、簡単に答えることができます。
「本醸造酒」などの原材料名に記載されている「醸造アルコール」は、搾る直前のもろみに添加する、いわば焼酎のようなアルコールです。
アルコール添加(通称アル添)は糖分やアミノ酸などのエキス分を低くしてキレの良い味わいに仕上げたり香りを引き立たせたりするために行う、意外と歴史の古い伝統的な技術です。これを行わないものは特定名称に「純米酒」の表記をすることができます。
純米酒はエキス分がそのままの状態なので、濃醇で奥行きのある味わいのものが多いのが特徴です。
さて、[ 非公開2022 ]のラベルを見てみると醸造アルコールの記載がありません。ということで正解は「アル添無し」となりますので、純米酒系統のお酒であるということが分かります。
[ 非公開2022 ]は「火入れ酒」です。
これも多くの人が正解していました。ラベルに「要冷蔵」の表記がなかったことがヒントになっていたかもしれません。
生酒は酒質が変化しやすいデリケートな商品ですがフレッシュな味わいを楽しむのにぴったりなお酒です。
酒質の変化を可能な限り減らすために、変化の一因となる酵母の殺菌や酵素の働きを止める目的で行われるのが火入れです。
搾った直後のお酒と比べてフレッシュ感はやや感じにくくなりますが、より長い期間品質を保持した状態で保存することが可能です。
もちろん保管状況にもよりますので、冷蔵での保管を推奨しております。
なお、菊の司酒造では搾りたてのお酒の味わいをなるべくそのままお楽しみいただくため、すべてのお酒を3日以内にビン詰めしております。
また炭素ろ過による酒質矯正をせず、搾り後の加水も最小限にしているため、しぼりたて直後の原酒がもっている味わいを火入れ酒で感じていただけたのであれば嬉しく思います。
[ 非公開2022 ]の日本酒度は「+5」です。
日本酒度とは、お酒の比重(水と比べた重さ)を表しており、おおよその甘辛の目安として、発酵管理に用いられている数値です。
コーヒーに砂糖が「溶ける」ように、糖分などのエキス分が多い酒は比重が重くなり、日本酒度で言うと「マイナス (甘口)」になります。
逆に、日本酒のアルコール分であるエタノールは水よりもかなり軽いため、溶けているエキス分が少なければ少ないほど比重が軽くなり、日本酒度でいうと「プラス (辛口)」になるのです。
先述の通り数値はあくまで目安です。
回答してくださった方の中には日本酒度 -2の甘口のお酒に感じた方もいるということがグラフを見てわかるかと思います。
日本酒度以外の数値や、その時の体調、さらに言えば使った酒器などの様々な要因によって感じ方が様々なのが本当に面白いですね!
[ 非公開2022 ]は「酸度1.8」です。
酸度とは、日本酒にアルカリ性溶液を滴下し中和するまでに必要な試液の量を表した数値です。
日本酒にはリンゴ酸やコハク酸、乳酸に代表されるたくさんの有機酸がふくまれており、それらは香りや味わいに大きく影響しています。
酸、というと「すっぱい」のではと思いがちですが味の感じ方はさまざまで、たとえばコハク酸のように「旨み」のように感じる成分もあります。
これは鰹節の「イノシン酸」や昆布の「グルタミン酸」などをイメージしていただければ分かりやすいかと思います。
これらの酸を生産するのが、酵母をはじめとする微生物です。
ざっくりとイメージすると、微生物がたくさん活動すれば酸が出やすく、酒造りにおいてはもろみ中の栄養成分や発酵温度を管理することでコントロールしています。
ちなみに菊の司酒造のお酒は酸度1.5前後のものが多いです。それと比べると今回の[ 非公開2022 ]は酸度1.8とやや酸度が高いので、「さっぱりとしていて、やや酸味が立つ味わい」だったのではないでしょうか。
合わせるなら角煮などの油分のある煮物などが高相性だと思います。
「菊の司酒造 [ 非公開 ] 2022」のスペックはこのようなお酒です。
実はこのお酒、これから発売する新商品を[ 非公開2022 ]として先行販売したもの!
2022年8月11日より「純米酒 七福神 ふくひびき」として全国の酒販店様、弊社オンラインショップ、KURAMAEにて順次発売を開始いたします。
創業250周年を迎え、2022年10月より岩手県雫石町の新工場にてさらなる進化を目指す菊の司酒造。
岩手県では酒造用米として初めて「ふくひびき」の栽培に成功した雫石町の契約農家さんと、雫石町の公式ロゴより虹の配色を用いた「雫石テロワール」のエピソード0となる1本です。
非公開として既に口にされた方も、ラベルの印象やスペックを目にした状態でもう一度お飲みいただくとまた違った印象を持つこともあるはずです。今一度「純米酒 七福神 ふくひびき」として是非お楽しみください!
菊の司酒造「非公開」はあえてスペックを一切公開しないまま「利き酒を楽しむ商品」として企画し、発売しました。
その結果、たくさんの方に日本酒を自分の感覚で楽しんでいただくことが実現し、たくさんのお客さまのお声をいただくことができました。蔵人一同、本当に嬉しく思います。
日本酒を「情報で嗜む」のではなく「感覚で楽しむ」おもしろさに気付く、そんなちょっとしたきっかけになれば幸いです。
プレゼント企画については後日厳正なる抽選のもと、「kikunotsukasa.1772@gmail.com」のアドレスよりメールを送信させて頂きます。
「kikunotsukasa.1772@gmail.com」からのメールを受信できる様、ドメイン設定を解除して頂いただくか、又はドメイン『gmail.com』を 受信リストに加えていただきますよう、お願い申し上げます。